その他 - 突入電流防止回路の設計方法

提供:MochiuWiki - SUSE, Electronic Circuit, PCB
2020年8月29日 (土) 04:21時点におけるWiki (トーク | 投稿記録)による版 (ページの作成:「== 概要 == ここでは、突入電流防止回路の設計方法について記載する。<br> <br> 突入電流防止回路の設計では、突入電流防止素子…」)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
ナビゲーションに移動 検索に移動

概要

ここでは、突入電流防止回路の設計方法について記載する。

突入電流防止回路の設計では、突入電流防止素子(温度ヒューズ抵抗orセメント抵抗orサーミスタ)の最小抵抗値、耐量サージエネルギー、定格電流を求める必要がある。
設計方法を記載するにあたり、以下のパラメータを使用する。

  • ACライン電圧VINの実行値VINRMS
    100[V]
  • ACライン電圧VINの変動率
    ±10[%]
  • 出力電力POUT
    200[W]
  • 電源効率η
    90[%]
  • 力率cosφ
    0.8
  • 入力電解コンデンサCINの容量値
    330[uF]
  • 周囲温度TA
    10[℃]~35[℃]
  • 突入電流IRUSHの仕様
    30[A]



設計手順 1 : 突入電流の仕様から突入電流防止素子の最小抵抗値を求める

突入電流防止素子の最小抵抗値RMINは、ACライン電圧VINのピーク値VPEAK、突入電流IRUSHの仕様によって決まる。
一般的には、20[A]~40[A]が突入電流の仕様となる。

まず、ACライン電圧vINのピーク値VPEAKを求める。
ACライン電圧VINの実行値VINRMSが100[V]、その変動は10[%]なので、ACライン電圧VINのピーク値VPEAKは以下の値となる。


突入電流IRUSHの仕様が30[A]なので、突入電流防止素子の最小抵抗値RMINは以下の値となる。
突入電流防止素子に温度ヒューズ抵抗やセメント抵抗を用いた場合は、下式で求めた値が最小抵抗値RMINとなる。


しかし、サーミスタは温度によって抵抗値が変化する。
周囲温度TAの最大値が35[℃]なので、35[℃]の時の最小抵抗値がRMINである必要がある。
例えば、35[℃]の時の抵抗値が25[℃]の抵抗値と比較して0.8倍に低下すると仮定すると、25[℃]の時において必要な最小抵抗値RMIN(25[℃])は以下の値となる。



設計手順 2 : 電源投入時のサージエネルギーを求める

次に電源投入時のサージエネルギーEを求める。

電源投入時において、突入電流防止素子にかかるサージエネルギーEは以下の値となる。 下式より、サージエネルギーEは抵抗値依存症がありません。 E===12CINVPEAK2CIN(VAC×1.1)23.993[J] このサージエネルギーEに耐える素子を選定する必要があります。

突入電流防止素子(サーミスタ/温度ヒューズ抵抗/セメント抵抗)のデータシートには以下のようなサージエネルギー耐量のグラフ(耐ラッシュ特性)があります。または、表などに瞬時エネルギー耐量が記載されています。 突入電流防止抵抗(サーミスタ_温度ヒューズ抵抗_セメント抵抗)のデータシート エネルギー耐量のグラフが記載されている場合には、グラフの値を超えないように選定します。瞬時エネルギー耐量が記載されている場合にはサージエネルギーEより大きな素子を選定します。

設計手順 3 : 通常使用時に流れる電流の最大値を求める

ACライン電圧vINの実行値VINRMSが100V、ACライン電圧vINの変動率が±10%、出力電力POUTが200W、電源効率ηが90%、力率cosφが0.8なので、通常使用時に流れる電流の最大値IINRMSは以下の値となります。 IINRMS=POUTη×cosφ×0.9VINRMS=3.08[A]

上式において、VINRMSについている0.9ですが、ACライン電圧vINの実行値VINRMSが最小値となるときに、通常使用時に流れる電流が最大値IINRMSとなります。そのため、ACライン電圧vINの実行値VINRMSに対して変動10%を引いた値としています。

安全設計する場合には、上式で求めた値に対してディレーティングを考慮します。ディレーティングを80%とすると、突入電流防止回路に必要な定格電流IRATEDは以下の値となります。 IRATED=IINRMS0.8=3.86[A] 突入電流防止回路の種類には「突入電流防止素子(温度ヒューズ抵抗orセメント抵抗orサーミスタ)のみを使用したパッシブICL」と「突入防止素子(温度ヒューズ抵抗orセメント抵抗orサーミスタ)に並列にスイッチング素子(リレー/トライアック/サイリスタ)を使用したアクティブICL」があります。 突入電流防止回路の種類 「突入電流防止素子(温度ヒューズ抵抗orセメント抵抗orサーミスタ)のみを使用したパッシブICL」の場合、通常動作時は、突入電流防止素子に電流がながれていますので、突入電流防止素子が必要な定格電流IRATEDを満たす必要があります。

一方、「突入防止素子(温度ヒューズ抵抗orセメント抵抗orサーミスタ)に並列にスイッチング素子(リレー/トライアック/サイリスタ)を使用したアクティブICL」の場合、通常動作時は、スイッチング素子に電流がながれていますので、スイッチング素子が必要な定格電流IRATEDを満たす必要があります。

補足 突入電流防止素子にサーミスタを用いた場合、通常使用時に流れる電流の最大値に対して、余裕のある定格電流のものを選定してはいけません。余裕のありすぎるものを使用すると、温度上昇が少なくて抵抗値が下がらず、電源への供給不足となる場合があります。 突入電流の仕様がない場合、電源で使用される素子(ブリッジダイオードなど)の定格電流を突入電流の仕様とします。