「応用数学 - 常微分方程式の基礎」の版間の差分
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<math>\frac{dx}{dt} = kx \qquad</math> (時刻tにおける人口 : x(t))<br> | <math>\frac{dx}{dt} = kx \qquad</math> (時刻tにおける人口 : x(t))<br> | ||
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時刻tにおける人口をx(t)とする時、以下に示す微分方程式が成立する。<br> | |||
<math>\frac{dx}{dt} = kx \qquad</math> (マルサスの法則)<br> | |||
一般解は、<math>x = C e^{kt} \qquad</math> (Cは、任意定数)<br> | |||
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kは出生率aと死亡率bとの差 <math>a - b</math> である。(kは増殖率と呼ばれる)<br> | |||
<math>k > 0</math> (出生率 > 死亡率)ならば、人口は時間とともに指数関数的に増加する。<br> | |||
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* マルサスの法則 | |||
*: まだ、人口が少なく、食住環境が良好ならば、人口はマルサスの法則に従う。 | |||
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* ロジスティック方程式 (死亡率bが人口に比例) | |||
*: 一方、次第に人口が増加し、食料や住居環境が悪くなってくると、人口増加は抑制される。 | |||
*: 例えば、食料の供給が制限されると、死亡率は一定ではなく、人口に比例する。 | |||
*: <math>\frac{dx}{dt} = (a - bx)x</math> | |||
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* ゴムパーツ方程式 (死亡率bが人口の対数に比例) | |||
*: または、人口の対数に比例する。 | |||
*: <math>\frac{dx}{dt} = (a - b \, \ln{x})x</math> | |||
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==== ニュートンの運動方程式 ==== | ==== ニュートンの運動方程式 ==== | ||
物体の加速度は、それに作用する力に比例し、その質量に反比例する。<br> | 物体の加速度は、それに作用する力に比例し、その質量に反比例する。<br> | ||
2022年11月14日 (月) 04:13時点における版
概要
一般解と特殊解
n階常微分方程式の初期値問題において、n個の任意定数を含む解を、一般解という。
一般解の任意定数に特別な値を代入して得られる解を、特殊解(特別解または特解)という。
1つの定数Cに対して、以下の初期値問題の解曲線を とする。
定数Cを動かした時、解曲線 は様々な関数を表す。
このように、常微分方程式 の無数の解曲線を表す任意定数Cを含んだ解 が一般解である。
一般解は、微分方程式の解曲線の集まり、すなわち、解曲線群を表す。
特殊解は、解曲線群の中の個々の解曲線を表す。
一般解と特殊解の例
- 1階常微分方程式
- 一般解
- 特殊解
- Cに0を代入した時の特殊解 :
- Cに1を代入した時の特殊解 :
- 2階常微分方程式
- 一般解
- 特殊解
- を代入した時の特殊解 :
特異解
常微分方程式の一般解の任意定数において、どのような値を代入しても得られない解が存在する場合がある。
このような解を、特異解という。
つまり、特異解は一般解に含めることができない解である。
特異解の例
- 常微分方程式
- 一般解
- (直線群)
- 特異解
- (放物線)
解の存在と一意性
特別な場合の初期値問題については、解の存在とその一意性が保障されている。
- 定理(解の存在と一意性)
- 2変数関数f(x, y)が点(a, b)を含むxy平面上のある領域において、連続かつ有限の値をとるならば、
- 初期値問題 は、少なくとも1つの解をもつ。
- さらに、その領域で、f(x, y)がyに関して偏微分可能であり、 が連続ならば、ただ1つの解をもつ。
基礎方程式 (支配方程式)
根本的な物理法則を数学的な方程式で表したものを、基礎方程式、または、支配方程式(governing equations)という。
それらの方程式は、常微分方程式、または、偏微分方程式で表されることが多い。
基礎方程式の例
- マクスウェル方程式(電磁気学)
- シュレーディンガー波動方程式(量子力学)
- ハイゼンベルグ運動方程式(量子力学)
- ナビエ-ストークス方程式(流体力学)
- アインシュタイン方程式(一般相対性理論)
常微分方程式の例
ニュートンの冷却法則
ニュートンの冷却法則とは、物体の温度の低下(上昇)速度は、外気との温度差に比例する。
(変数分離系)
xは熱した物質の温度で、時間tを変数とする関数であり、xsは周囲の環境の温度で定数である。
また、 は冷却の強さを表す定数(熱伝達率)であり、熱容量、表面積、熱伝導率等に依存する。
この時、 の一般解は、
したがって、 (C : 任意の定数)となる。
とする時、定数Cは となる。
この時、特殊解は、 となる。
初期値を とする時、 と表すことができる。
例題1. フライパンの温度x0を100[℃]、部屋の温度xsを20[℃]とする。 フライパンを50分間放置した場合(x(t) = 50)、ニュートンの冷却法則における定数kを求めよ。 解答. より、 したがって、 となる。 例題2. 温度20[℃]の室内で温度60[℃]のコーヒーを5分間放置する場合、コーヒーは何[℃]になるか求めよ。 この部屋では、 とする。 解答. より、
人口増加の法則
人口(一般に生物の個体数)の増加率は、その時点での人口に比例する。
(時刻tにおける人口 : x(t))
人口(一般に生物の個体数)の増加は、その時点での人口に比例する。
時刻tにおける人口をx(t)とする時、以下に示す微分方程式が成立する。
(マルサスの法則)
一般解は、 (Cは、任意定数)
kは出生率aと死亡率bとの差 である。(kは増殖率と呼ばれる)
(出生率 > 死亡率)ならば、人口は時間とともに指数関数的に増加する。
- マルサスの法則
- まだ、人口が少なく、食住環境が良好ならば、人口はマルサスの法則に従う。
- ロジスティック方程式 (死亡率bが人口に比例)
- 一方、次第に人口が増加し、食料や住居環境が悪くなってくると、人口増加は抑制される。
- 例えば、食料の供給が制限されると、死亡率は一定ではなく、人口に比例する。
- ゴムパーツ方程式 (死亡率bが人口の対数に比例)
- または、人口の対数に比例する。
ニュートンの運動方程式
物体の加速度は、それに作用する力に比例し、その質量に反比例する。
(F : 力、 m : 質量、 : 加速度)