マイコンの基礎 - デカップリングコンデンサ
概要
マイコンの電源に接続するデカップリングコンデンサは、バイパスコンデンサとも呼ばれる。
マイコンから輻射されるノイズを低減したり、入力されるノイズをバイパスする目的で、電源端子とGND端子間に挿入する。
また、電源電圧のリプル(変動)を防ぐ平滑化の目的もある。(下図を参照)
ノイズ除去や電源電圧の平滑化には、幅広い周波数に対してインピーダンスが低いことが条件となる。
一般的に、セラミックコンデンサやタンタル電解コンデンサが小型で周波数特性に優れており、インピーダンスも低いため、
マイコンのデカップリングコンデンサに使用される。
配置する位置は、マイコンの電源端子に近い場所を選ぶ。
コンデンサを接続するマイコンの端子と容量において、マイコンの電源の内部回路に依存するが、
各マイコンのマニュアルやアプリケーションノートに推奨回路が記載されている。
また、各マイコンメーカーの評価ボードの回路も参考になる。
コンデンサの種類
コンデンサには、積層セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ等、誘電体に使用される材料と構造で分類される。
電解コンデンサは大容量の電源系(電源の整流回路等)、フィルムコンデンサは安定した容量が必要な発振回路等、
セラミックコンデンサは幅広い周波数帯に使用できるため、マイコンのデカップリングコンデンサにはセラミックコンデンサが使用される。
コンデンサには、容量成分の他に抵抗成分とインダクタンス成分が含まれている。
セラミックコンデンサはこれらの成分が小さいため、高周波数になるほどインピーダンスが小さくなるという特長がある。
一般的に、ノイズ成分は高周波数であるため、セラミックコンデンサはノイズ除去に優れている。
コンデンサの特性について、コンデンサの基本、選択のポイントを参照すること。
コンデンサの選択
STマイクロ社のSTM32F2シリーズを使用して、具体的な電源回路の設計方法および注意点を記載する。
(AN3320:Getting started with STM32F20xxx/21xxx MCU hardware developmentというアプリケーションノートを例に挙げて記載する)
このアプリケーションノートのDecoupling(デカップリング)という章に、
"各電源端子に、複数のセラミックコンデンサ(100[nF])と1つのタンタルまたはセラミックコンデンサ(4.7[μF]〜typ.10[μF])を接続する"と記述がある。
また、下図に示すような推奨回路も記載されている。
上記の複数のセラミックコンデンサは、STM32F2シリーズの評価用ボード(STM3220G-EVAL)の回路図を参照することで、個数が推測できる。
評価用ボード(STM3220G-EVAL)の回路では、0.1[μF]のセラミックコンデンサが15個、4.7[μF]のタンタル電解コンデンサが1個あるため、
電源端子1ピンに1個、またはそれ以上のコンデンサが付いていることが分かる。
ピン数の少ないマイコンを使用する場合は、ピン数に合わせてセラミックコンデンサを減らしてもよい。
回路で発生するノイズの種類や電源電圧の変動は一様ではないため、マイコンメーカーの推奨回路通りに設計する必要はないが、設計の目安になる。
PCBのレイアウト
PCBにデカップリングコンデンサを配置する場合、マイコンの近くに配置する必要がある。
下図に、マイコン(STM32F2のLQFP64ピン)のレイアウト例を示す。
回路図では、デカップリングコンデンサは電源回路の部分にまとめて記述されているが、実際のPCBでまとめて配置してはならない。
できるだけ、マイコンの電源端子の近くに配置する。
左は悪い配置 右が良い配置
BGAパッケージ等では、マイコンの端子がマイコン下側に配置されているが、PCBの裏側(マイコン直下の付近)に配置することを推奨する。
※注意と参考情報
- 内蔵レギュレータ用の平滑用コンデンサ
- 近年のマイコンは電圧レギュレータを内蔵しており、内部回路はマイコンの電源電圧よりも低い電圧で動作する場合が多い。
- この場合、マイコンの内部回路の事実上の電源は、内蔵レギュレータの出力電源ラインとなる。
- マイコンによっては、このレギュレータの出力電圧を平滑化するための外付けコンデンサの専用ピンが設けられているものがある。
- その場合も、セラミックコンデンサやタンタル電解コンデンサ等の周波数特性が良くインピーダンスが低いコンデンサを、
- マイコンのマニュアルにしたがって、その端子近辺に配置する。
- 内蔵レギュレータに最も近い電源経路にある電源端子
- マイコンに複数の電源端子がある場合でも、内部電源回路は内蔵レギュレータの入り口に繋がっている。
- (ただし、全てのマイコンではないため、各マイコンメーカーに確認する必要がある)
- 内蔵レギュレータの入り口に最も近い電源端子に、他の端子よりも多くコンデンサを付けることで、ノイズ対策効果と平滑化の効果を期待できる。
- マイコンメーカーに問い合わせてもよいが、もし、マイコンの使用例において、1つの電源端子だけコンデンサの数が多い場合、
- その端子が内蔵レギュレータの入り口に最も近い電源端子の可能性が高いと考えられる。