トランジスタ - カレントミラー回路
概要
ここでは、カレントミラー回路について、基本的な内容から等価回路や原理まで記載する。
カレントミラー回路とは
カレントミラー回路とは、カレント(電流)をミラー(鏡)のようにコピーする回路である。
カレントミラー回路で最も有名で基本的な回路を下図に示す。
トランジスタQ1のコレクタ端子とトランジスタQ1とQ2のベース端子を接続している構成となる。
カレントミラー回路の原理は後述のセクションに記載するが、
カレントミラー回路に対して、電流I1が流れると、トランジスタQ2のコレクタにも電流I2が流れる。
電流I1がミラー(鏡)のように電流I2にコピーされるので、カレントミラー回路と呼ばれている。
カレントミラー回路の等価回路
トランジスタQ1のベースとエミッタはPN接合なので、ダイオードのように表される。
そして、コレクタとベースを接続してるので等価回路は下図のようになる。
このように、トランジスタのコレクタとベースを接続する場合、コレクタとベースがダイオードのアノードとなり、エミッタがカソードとなる。
カレントミラー回路の原理と計算方法
電流I1と電流I2が等しくなる原理を計算式を用いて記載する。
電流I1の値の導出
トランジスタQ1のエミッタ電流IE1は、トランジスタQ1のコレクタ電流IC1とベース電流IB1の合計値なので、下式(1)が成り立つ。
… (1)
電流I1は、トランジスタQ1のコレクタ電流IC1とベース電流IB1、トランジスタQ2のベース電流IB2の合計値なので、下式(2)が成り立つ。
… (2)
電流I2の値の導出
トランジスタQ1とQ2のベース電圧は等しいため、トランジスタQ1とトランジスタQ2の特性が等しい場合、
トランジスタQ1のエミッタ電流IE1とトランジスタQ2のエミッタ電流IE2が等しくなるので、下式(3)が成り立つ。
… (3)
電流I2とトランジスタQ2のベース電流IB2の合計がコレクタ電流IE2の合計値なので、下式(4)が成り立つ。
… (4)
電流I1と電流I2の関係
(2)式と(4)式を用いると、電流I1と電流I2の関係式は、下式(5)のようになる。
… (5)
ここで、トランジスタQ2の直流電流増幅率hFEが大きく、ベース電流IB2を無視すると、下式(6)が成り立つ。
… (6)
これにより、カレントミラー回路において、電流I1と電流I2が等しくなる。
※補足
式の導出では、トランジスタQ1とQ2の直流電流増幅率hFEが大きいと仮定してベース電流IB2を無視したが、
厳密には、(5)式より、電流I1は電流I2よりも2IB2だけ大きくなる。
電流I1に電流I2を近づけるには、トランジスタQ1とQ2に高い直流増幅率hFEを持つものを使用する必要がある。
トランジスタQ1のエミッタ電流IE1とトランジスタQ2のエミッタ電流IE2を等しくするためには、トランジスタQ1とトランジスタQ2の特性を等しくすることが重要となる。
トランジスタは温度特性を持っており、温度によりエミッタ電流が変化するため、トランジスタQ1とトランジスタQ2を熱結合して、温度条件を同一に揃える必要がある。
そのため、2素子を1つのシリコン基板上に実装してあるモノリシック・デュアルタイプのトランジスタを利用することを推奨する。
トランジスタQ1のコレクタ電圧とトランジスタQ2のベース電圧が同電位であるため、
トランジスタQ2のコレクタ-エミッタ間電圧VCEは、トランジスタQ1のコレクタ-エミッタ間電圧より大きくなる。
また、トランジスタQ2に掛かる電圧が変化すると、電流I2はアーリー効果の影響を受けて変化する。
PNP型のカレントミラー回路
PNP型のカレントミラー回路を下図に示す。
NPN型と同様に、トランジスタQ1のコレクタ端子とトランジスタQ1とQ2のベース端子を接続している構成となっている。