インストール - Boost
概要
Boostは、ピアレビューされた移植可能なC++ソースライブラリを無償で提供している。
C++標準ライブラリと親和性のあるライブラリを重視しており、広く有用かつ幅広いソフトウェアで使用できることを意図している。
Boostのライセンスは、全てのユーザが最小限の制限でBoostライブラリを使用することを推奨している。
BoostにおけるOpen MPI
OpenMPI (Open Message Passing Interface) は、Boostライブラリ自体の一部ではないが、Boost.MPIというコンポーネントと密接に関連している。
Boost.MPIは、C++でMPI (Message Passing Interface) プログラミングを行うためのインターフェースを提供するBoostライブラリである。
MPIは並列計算や分散メモリシステムでのプログラミングに広く使用されているAPI規格である。
Open MPIは、このMPI規格の実装の1つである。
Boost.MPIは、Open MPIを含む様々なMPI実装と連携して動作するように設計されている。
Boost.MPIの主なメリットは、C++の抽象化を提供して、MPIプログラミングをより簡単かつ型安全にすることである。
また、Boostの他のライブラリ (例: Boost.Serialization) との統合も図られている。
Boost.MPIを使用する場合は、Open MPI等のMPI実装がシステムにインストールされている必要がある。
Boost.MPIは、これらの実装の上に構築され、より高レベルのC++インターフェースを提供する。
Boost.MPIをビルドする場合は、システムにOpen MPI等のMPI実装がインストールされていることが前提となる。
Boostのビルド時には、MPI実装のヘッダーファイルとライブラリへのパスを正しく指定する必要がある。
Boost.MPIは、基盤となるMPI実装 (Open MPI等) の性能特性を維持しつつ、C++の利点を活かしたインターフェースを提供する。
また、異なるMPI実装間での互換性も考慮されている。
Open MPIはMPIの実装の1つであり、Boost.MPIはこのようなMPI実装を利用してC++で並列プログラミングを行うためのインターフェースを提供するBoostコンポーネントである。
Open MPIはBoost自体の一部ではないが、Boost.MPIを使用する場合の基盤となる重要なソフトウェアの1つとして位置付けられている。
Boostのインストール
RHEL / SUSE
Boostをビルドするため、依存関係のライブラリをインストールする。
# SUSE sudo zypper install libicu-devel xz-devel libbz2-devel libzstd-devel python-devel python3-devel \ openmpi-devel # オプション
Boostの公式Webサイトにアクセスして、Boostをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。
tar xf boost_<バージョン>.tar.gz cd boost_<バージョン>
Boostをビルドおよびインストールする。
# 全てインストールする場合 ./bootstrap.sh --prefix=<Boostのインストールディレクトリ> ./b2 \ --build-dir=./build \ --layout=system \ --variant=release \ install # ヘッダーファイルのみインストールする場合 ./bootstrap.sh --prefix=<Boostのインストールディレクトリ> ./b2 headers \ --build-dir=./build \ --layout=versioned \ install
ビルド時のオプションを、以下に示す。
--layout
オプション- 指定しない場合、Linuxでは
system
、Windowsではversioned
となる。
- versioned
- boostバイナリの名前には、Boostのバージョン番号、コンパイラ名とバージョン、エンコードされたビルドプロパティが含まれている。
- Boostヘッダは、Boostのヘッダディレクトリ内のサブディレクトリにインストールされて、その名前にBoostのバージョン番号が付加される。
- tagged
- boostバイナリの名前には、variantやthreading等のエンコードされたビルドプロパティが含まれるが、コンパイラ名とバージョン、Boostのバージョンは含まれない。
- taggedを指定する場合、同じコンパイラを使用して複数のBoostのバリアントをビルドする場合に便利である。
- system
- Boostバイナリの名前に、Boostのバージョン番号、コンパイラ名とバージョン番号は含まれない。
- Boostのヘッダは、Boostのヘッダディレクトリに直接インストールされる。
- systemを指定する場合、配布パッケージを構築するBoostの設計者を対象としている。
- 指定しない場合、Linuxでは
--build-type
オプション- 指定した事前定義されたライブラリのバリエーションセットをビルドする。
- どのバリエーションがビルドされるかは、各ライブラリが何をサポートしているかに依存することに注意する。
- minimal (デフォルト)
- 最小限のvariantのセットをビルドする。
- Windowsの場合、デバッグモードとリリースモードの静的マルチスレッドライブラリであり、共有ランタイムを使用する。
- Linuxの場合、リリースモードの静的および共有マルチスレッドライブラリである。
- complete
- 可能な全てのバリエーションをビルドする。
--toolset
オプション- ビルドに使用するツールセットを指定する。
必要ならば、~/.profileファイル等に環境変数を追記する。
vi ~/.profile
# ~/.profileファイル
export LD_LIBRARY_PATH="/<Boostのインストールディレクトリ>/lib:$LD_LIBRARY_PATH"
export BOOST_ROOT="<Boostのインストールディレクトリ>"
export BOOST_LIBRARYDIR="/<Boostのインストールディレクトリ>/lib"
export CPPFLAGS="-L$/<Boostのインストールディレクトリ>/include $CPPFLAGS"
Windows
Boostの公式Webサイトにアクセスして、Boostをダウンロードする。
過去のBoostをダウンロードする場合、https://www.boost.org/users/history/ にアクセスする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。
解凍したディレクトリに移動して、コマンドプロンプトまたはPowerShellを管理者権限で実行する。
b2.exeファイルを生成するため、バッチファイルを起動する。
bootstrap.bat
Boostライブラリを生成する。(32ビットおよび64ビットの両方を生成してもよい)
Boostライブラリの生成に使用できるオプションを、以下に示す。
toolset
オプション- Visual Studio 2005 :
msvc-8.0
- Visual Studio 2008 :
msvc-9.0
- Visual Studio 2010 :
msvc-10.0
- Visual Studio 2012 :
msvc-11.0
- Visual Studio 2013 :
msvc-12.0
- Visual Studio 2015 :
msvc-14.0
- Visual Studio 2017 :
msvc-14.1
- Visual Studio 2019 :
msvc-14.2
- Visual Studio 2022 :
msvc-14.3
- Visual Studio 2005 :
address-model
オプション- 32ビット向けライブラリを生成する場合 :
32
- 64ビット向けライブラリを生成する場合 :
64
- 32ビット向けライブラリを生成する場合 :
# 32ビット向けライブラリを生成する場合 b2.exe toolset=msvc-xx.x link=static runtime-link=static,shared --build-dir=build/x86 address-model=32 -j <CPUのコア数> install --includedir=<Boostのインストールディレクトリ>\include --libdir=<Boostのインストールディレクトリ>\stage\lib\x86 # 64ビット向けライブラリを生成する場合 b2.exe toolset=msvc-xx.x link=static runtime-link=static,shared --build-dir=build/x64 address-model=64 -j <CPUのコア数> install --includedir=<Boostのインストールディレクトリ>\include --libdir=<Boostのインストールディレクトリ>\stage\lib\x64
次に、Visual Studioを起動して、任意のC++のプロジェクトを作成する。
これは、各プロジェクトごとに設定する必要があることに注意する。
[プロジェクト]メインメニュー - [プロパティ]を選択する。
[プロジェクトページ]画面が開くので、画面左にある[C/C++] - [全般] - 画面右にある[追加のインクルードディレクトリ]に、以下の設定を追記する。
<Boostのインストールディレクトリ>\include\boost-<バージョン>
[プロジェクトページ]画面の画面左にある[リンカー] - [全般] - 画面右にある[追加のライブラリディレクトリ]に、以下の設定を追記する。
# 32ビット向けライブラリの場合 <Boostのインストールディレクトリ>\stage\lib\x86 # 64ビット向けライブラリの場合 <Boostのインストールディレクトリ>\stage\lib\x64
Boostライブラリの確認
Boostライブラリが使用できるかどうかを確認するため、以下に示すサンプルコードをビルドおよび実行する。
// boost.cpp
#include <iostream>
#include <vector>
#include <string>
#include <boost/version.hpp>
#include <boost/property_tree/ptree.hpp>
#include <boost/property_tree/xml_parser.hpp>
#include <boost/foreach.hpp>
struct Boost_Test {
std::string name1;
std::string name2;
};
int main()
{
std::cout << "boostバージョン : " << BOOST_VERSION << "\n";
std::cout << "boostライブラリバージョン : " << BOOST_LIB_VERSION << "\n";
std::vector<Boost_Test> books;
books.reserve(2);
Boost_Test test;
test.name1 = "BoostTest1";
test.name2 = "100";
books.push_back(test);
test.name1 = "BoostTest2";
test.name2 = "200";
books.push_back(test);
using boost::property_tree::ptree;
ptree pt;
BOOST_FOREACH(const Boost_Test & data, books)
{
ptree& child = pt.add("list.data", "");
child.put("<xmlattr>.name1", data.name1);
child.put("<xmlattr>.name2", data.name2);
}
using namespace boost::property_tree::xml_parser;
const int indent = 2;
write_xml("test.xml", pt, std::locale(), xml_writer_make_settings<std::string>(' ', indent));
return 0;
}
ソースコードをコンパイルする。
g++ -I/<Boostのインクルードディレクトリ>/include boost.cpp -o boost
コンパイルしたファイルを実行する。
./boost # 出力例 boostバージョン:107600 boostライブラリバージョン:1_76
# test.xmlファイルの内容
<?xml version="1.0" encoding="utf-8"?>
<list>
<data name1="BoostTest1" name2="100"/>
<data name1="BoostTest2" name2="200"/>
</list>