QMLのコントロール - ListModelのカスタム

提供:MochiuWiki - SUSE, Electronic Circuit, PCB
ナビゲーションに移動 検索に移動

概要

カスタムリストモデルの目的は、QMLのビューコンポーネントに対して柔軟なデータ構造を提供することである。
これは、ListView、GridView、TableView等のビューコンポーネントと組み合わせて使用される。

通常のListModelは、単純なKey-Value形式のプロパティのみをサポートしており、配列やネストされたオブジェクトを直接持つことができない。
これはListModelの大きな制限の1つとなっており、例えば、アイテムごとにタグのリストやサブアイテムを持ちたい場合、ListModelでは実現が困難である。

基本的な仕組みとして、カスタムリストモデルはC++側で定義してQAbstractListModelクラスを継承する。
このモデルはデータの保持と管理を担当しており、QMLインターフェースからアクセス可能なプロパティやメソッドを提供する。
特に、配列やネストされたオブジェクト等の複雑なデータ構造もサポートすることが可能となる。

モデルの重要な要素としてロールという概念があり、これは、各アイテムが持つプロパティを定義するものである。
例えば、連絡先リストのモデルの場合、名前、電話番号、メールアドレス、関連する連絡先の配列等をロールとして定義できる。
これらのロールは、QML側からアイテムデリゲートからアクセスすることができる。

データの更新と同期において、モデルのデータが変更された場合、適切なシグナルを発行してQMLビューに通知する必要がある。
これにより、ビューは自動的に更新されて最新のデータが表示できる。

パフォーマンスにおいては、大量のデータや複雑なデータ構造を扱う場合に効率的な実装が必要となる。
必要なデータのみをロードする遅延ローディング、表示される項目のみを処理するビューポートベースの最適化等を実装する。

さらに、モデルはソート、フィルタリング、データの追加・削除等の操作もサポートできる。 これらの操作は、QSortFilterProxyModelクラスを使用して定義することも可能である。
QSortFilterProxyModelクラスを使用することにより、複雑なデータ構造に対して、カスタムな並べ替えやフィルタリングのロジックが実装できる。

モデルとビューの分離という設計パターンにより、データの管理とその表示を明確に分けることができるため、コードの保守性と再利用性が向上する。
これは、Qt Quick / QMLアプリケーションの重要な設計原則の1つである。


カスタムリストモデルの定義

QAbstractListModelクラスの継承

カスタムリストモデルは、QAbstractListModelクラスを継承する必要がある。
このクラスは、データの格納、アクセス、変更のための機能を提供する。

 #include <QAbstractListModel>
 
 class <クラス名> : public QAbstractListModel
 {
    Q_OBJECT
 
 public:
    explicit CustomListModel(QObject *parent = nullptr) : QAbstractListModel(parent)
    {}
 
    // ...略
 }
 
 // 例:
 class CustomListModel : public QAbstractListModel
 {
    Q_OBJECT
 
 public:
    explicit CustomListModel(QObject *parent = nullptr) : QAbstractListModel(parent)
    {}
 
    // ...略
 }


モデルのデータ構造

データ構造の定義は、構造体を使用して各アイテムが持つデータを定義する。

以下の例では、名前、値、タグリストを定義している。

 // カスタムデータ構造の定義
 
 struct CustomData {
    QString name;
    int value;
    QStringList tags;  // 配列データ
 };


モデルのロール

列挙体を使用して、QML側からアクセスするためのロールを定義する。
これは、Qt::UserRoleから開始する一意の値を持つ。

以下の例では、CustomRoles列挙体を定義している。

 // モデルで使用するロールの定義
 // QML側からアクセスする場合に使用する識別子となる
 
 enum CustomRoles {
    NameRole = Qt::UserRole + 1,
    ValueRole,
    TagsRole
 };


モデルのデータ保持

 // モデルのデータを保持するコンテナ
 // 変数名は任意
 
 #include <QVector>
 
 QVector<カスタムデータの構造体> 変数名;
 
 // 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
 QVector<CustomData> m_items;


オーバーライドが必須のメソッド

rowCountメソッド
 // QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
 // データの行数を取得する
 
 int rowCount(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const override
 {
    // 親インデックスが有効な場合は0を返す
    // リストモデルでは子アイテムを持たないため
    if (parent.isValid()) return 0;
    return m_items.size();
 }


dataメソッド
 // QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
 // 指定されたインデックスとロールに対応するデータを取得する
 
 QVariant data(const QModelIndex &index, int role = Qt::DisplayRole) const override
 {
    // インデックスの有効性確認
    if (!index.isValid() || index.row() >= m_items.size()) return QVariant();
 
    // 指定された行のデータを取得
    const CustomData &item = m_items[index.row()];
 
    // ロールに応じて適切なデータを返す
    switch (role) {
       case NameRole:  return item.name;
       case ValueRole: return item.value;
       case TagsRole:  return QVariant::fromValue(item.tags);
       default:        return QVariant();
    }
 }


roleNamesメソッド
 // QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
 // QML側で使用するロール名を定義する
 
 QHash<int, QByteArray> roleNames() const override
 {
    // ロール名とロールIDのマッピングを定義
    // これにより、QML側でロール名を使用してデータにアクセス可能となる
    QHash<int, QByteArray> roles;
    roles[NameRole]  = "name";
    roles[ValueRole] = "value";
    roles[TagsRole]  = "tags";
    return roles;
 }


データ操作メソッド

appendItemメソッド

新しいアイテムを追加する。

 // QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
 
 Q_INVOKABLE void appendItem(<カスタムデータ構造の変数 1>, <カスタムデータ構造の変数 2>, <カスタムデータ構造の変数 3>, ...);
 
 // 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
 Q_INVOKABLE void appendItem(const QString &name, int value, const QStringList &tags);


removeItemメソッド

指定したインデックスのアイテムを削除する。

 // QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
 
 Q_INVOKABLE void removeItem(int index);


clearItemsメソッド

全てのアイテムを削除する。

 // QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
 
 Q_INVOKABLE void clearItems();


updateItemメソッド

既存のアイテムを更新する。

 // QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
 
 Q_INVOKABLE void updateItem(int index, <カスタムデータ構造の変数 1>, <カスタムデータ構造の変数 2>, <カスタムデータ構造の変数 3>, ...);
 
 // 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
 Q_INVOKABLE void updateItem(int index, const QString &name, int value, const QStringList &tags);