QMLのコントロール - ListModelのカスタム
概要
カスタムリストモデルの目的は、QMLのビューコンポーネントに対して柔軟なデータ構造を提供することである。
これは、ListView、GridView、TableView等のビューコンポーネントと組み合わせて使用される。
通常のListModelは、単純なKey-Value形式のプロパティのみをサポートしており、配列やネストされたオブジェクトを直接持つことができない。
これはListModelの大きな制限の1つとなっており、例えば、アイテムごとにタグのリストやサブアイテムを持ちたい場合、ListModelでは実現が困難である。
基本的な仕組みとして、カスタムリストモデルはC++側で定義してQAbstractListModelクラスを継承する。
このモデルはデータの保持と管理を担当しており、QMLインターフェースからアクセス可能なプロパティやメソッドを提供する。
特に、配列やネストされたオブジェクト等の複雑なデータ構造もサポートすることが可能となる。
モデルの重要な要素としてロールという概念があり、これは、各アイテムが持つプロパティを定義するものである。
例えば、連絡先リストのモデルの場合、名前、電話番号、メールアドレス、関連する連絡先の配列等をロールとして定義できる。
これらのロールは、QML側からアイテムデリゲートからアクセスすることができる。
データの更新と同期において、モデルのデータが変更された場合、適切なシグナルを発行してQMLビューに通知する必要がある。
これにより、ビューは自動的に更新されて最新のデータが表示できる。
パフォーマンスにおいては、大量のデータや複雑なデータ構造を扱う場合に効率的な実装が必要となる。
必要なデータのみをロードする遅延ローディング、表示される項目のみを処理するビューポートベースの最適化等を実装する。
さらに、モデルはソート、フィルタリング、データの追加・削除等の操作もサポートできる。
これらの操作は、QSortFilterProxyModel
クラスを使用して定義することも可能である。
QSortFilterProxyModel
クラスを使用することにより、複雑なデータ構造に対して、カスタムな並べ替えやフィルタリングのロジックが実装できる。
モデルとビューの分離という設計パターンにより、データの管理とその表示を明確に分けることができるため、コードの保守性と再利用性が向上する。
これは、Qt Quick / QMLアプリケーションの重要な設計原則の1つである。
カスタムリストモデルの定義
QAbstractListModelクラスの継承
カスタムリストモデルは、QAbstractListModel
クラスを継承する必要がある。
このクラスは、データの格納、アクセス、変更のための機能を提供する。
#include <QAbstractListModel>
class <クラス名> : public QAbstractListModel
{
Q_OBJECT
public:
explicit CustomListModel(QObject *parent = nullptr) : QAbstractListModel(parent)
{}
// ...略
}
// 例:
class CustomListModel : public QAbstractListModel
{
Q_OBJECT
public:
explicit CustomListModel(QObject *parent = nullptr) : QAbstractListModel(parent)
{}
// ...略
}
モデルのデータ構造
データ構造の定義は、構造体を使用して各アイテムが持つデータを定義する。
以下の例では、名前、値、タグリストを定義している。
// カスタムデータ構造の定義
struct CustomData {
QString name;
int value;
QStringList tags; // 配列データ
};
モデルのロール
列挙体を使用して、QML側からアクセスするためのロールを定義する。
これは、Qt::UserRole
から開始する一意の値を持つ。
以下の例では、CustomRoles列挙体を定義している。
// モデルで使用するロールの定義
// QML側からアクセスする場合に使用する識別子となる
enum CustomRoles {
NameRole = Qt::UserRole + 1,
ValueRole,
TagsRole
};
モデルのデータ保持
// モデルのデータを保持するコンテナ
// 変数名は任意
#include <QVector>
QVector<カスタムデータの構造体> 変数名;
// 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
QVector<CustomData> m_items;
オーバーライドが必須のメソッド
rowCountメソッド
// QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
// データの行数を取得する
int rowCount(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const override
{
// 親インデックスが有効な場合は0を返す
// リストモデルでは子アイテムを持たないため
if (parent.isValid()) return 0;
return m_items.size();
}
dataメソッド
// QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
// 指定されたインデックスとロールに対応するデータを取得する
QVariant data(const QModelIndex &index, int role = Qt::DisplayRole) const override
{
// インデックスの有効性確認
if (!index.isValid() || index.row() >= m_items.size()) return QVariant();
// 指定された行のデータを取得
const CustomData &item = m_items[index.row()];
// ロールに応じて適切なデータを返す
switch (role) {
case NameRole: return item.name;
case ValueRole: return item.value;
case TagsRole: return QVariant::fromValue(item.tags);
default: return QVariant();
}
}
roleNamesメソッド
// QAbstractListModelクラスのオーバーライドが必須のメソッド
// QML側で使用するロール名を定義する
QHash<int, QByteArray> roleNames() const override
{
// ロール名とロールIDのマッピングを定義
// これにより、QML側でロール名を使用してデータにアクセス可能となる
QHash<int, QByteArray> roles;
roles[NameRole] = "name";
roles[ValueRole] = "value";
roles[TagsRole] = "tags";
return roles;
}
データ操作メソッド
appendItemメソッド
新しいアイテムを追加する。
// QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
Q_INVOKABLE void appendItem(<カスタムデータ構造の変数 1>, <カスタムデータ構造の変数 2>, <カスタムデータ構造の変数 3>, ...);
// 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
Q_INVOKABLE void appendItem(const QString &name, int value, const QStringList &tags);
removeItemメソッド
指定したインデックスのアイテムを削除する。
// QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
Q_INVOKABLE void removeItem(int index);
clearItemsメソッド
全てのアイテムを削除する。
// QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
Q_INVOKABLE void clearItems();
updateItemメソッド
既存のアイテムを更新する。
// QML側から呼び出し可能なメソッドとして使用する
Q_INVOKABLE void updateItem(int index, <カスタムデータ構造の変数 1>, <カスタムデータ構造の変数 2>, <カスタムデータ構造の変数 3>, ...);
// 例: 上記の例のCustomData構造体の場合
Q_INVOKABLE void updateItem(int index, const QString &name, int value, const QStringList &tags);