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ただし、ハイエンドのオシロスコープでは、周波数帯域を有効に利用するため、<br> | ただし、ハイエンドのオシロスコープでは、周波数帯域を有効に利用するため、<br> | ||
周波数特性を高域まで平坦に伸ばし、その後急に減衰するようにしたり、AD変換後の信号をDSPによって補正したりするものがある。<br> | 周波数特性を高域まで平坦に伸ばし、その後急に減衰するようにしたり、AD変換後の信号をDSPによって補正したりするものがある。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 1.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 100[MHz]のオシロスコープの周波数特性'''</center><br> | <center>'''図. 100[MHz]のオシロスコープの周波数特性'''</center><br> | ||
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オシロスコープに表示される波形の立ち上がり時間は、信号の立ち上がり時間とオシロスコープの立ち上がり時間が合わさったものになる。<br> | オシロスコープに表示される波形の立ち上がり時間は、信号の立ち上がり時間とオシロスコープの立ち上がり時間が合わさったものになる。<br> | ||
したがって、正確な立ち上がり時間を測定するためには、信号の立ち上がり時間の4~5倍の立ち上がり時間がオシロスコープで必要となる。<br> | したがって、正確な立ち上がり時間を測定するためには、信号の立ち上がり時間の4~5倍の立ち上がり時間がオシロスコープで必要となる。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 2.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 立ち上がり時間の誤差'''</center><br> | <center>'''図. 立ち上がり時間の誤差'''</center><br> | ||
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サンプリング周波数が速いほど波形を細かく見ることができる。<br> | サンプリング周波数が速いほど波形を細かく見ることができる。<br> | ||
一般的に、観測した周波数成分の5~10倍以上のサンプルレートが必要となる。<br> | 一般的に、観測した周波数成分の5~10倍以上のサンプルレートが必要となる。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 3.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 入力信号とサンプル点の関係'''</center><br> | <center>'''図. 入力信号とサンプル点の関係'''</center><br> | ||
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66行目: | 66行目: | ||
*: 例えば、I2C、SPI、RS-232/422/485/UART、USB 2.0、CAN、CAN FD、LIN、FlexRay等の幅広いシリアル通信規格に対応しているため、 | *: 例えば、I2C、SPI、RS-232/422/485/UART、USB 2.0、CAN、CAN FD、LIN、FlexRay等の幅広いシリアル通信規格に対応しているため、 | ||
*: ファームウェアのデバッグにオシロスコープが利用できる。 | *: ファームウェアのデバッグにオシロスコープが利用できる。 | ||
*: | *: [[ファイル:Oscilloscope Basic 4.jpg|フレームなし|中央]] | ||
*: <center>'''図. 5シリーズMSOによるCAN信号の観測'''</center> | *: <center>'''図. 5シリーズMSOによるCAN信号の観測'''</center> | ||
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79行目: | 79行目: | ||
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オシロスコープの入力回路は、おおよそ下記のようになっている。<br> | オシロスコープの入力回路は、おおよそ下記のようになっている。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 5.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 1[GHz]帯域以下のオシロスコープの入力回路'''</center><br> | <center>'''図. 1[GHz]帯域以下のオシロスコープの入力回路'''</center><br> | ||
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126行目: | 126行目: | ||
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オシロスコープは、電子回路の動作を観測する製品であるため、生体計測等の高感度測定を要求する用途では、以下のようなアンプを用意する必要がある。<br> | オシロスコープは、電子回路の動作を観測する製品であるため、生体計測等の高感度測定を要求する用途では、以下のようなアンプを用意する必要がある。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 6.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 外付けの差動プリアンプ ADA400A'''</center><br> | <center>'''図. 外付けの差動プリアンプ ADA400A'''</center><br> | ||
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186行目: | 186行目: | ||
トリガーソース、レベル、スロープ(向き)を決めて観測の基準点(トリガー点)とする時、<br> | トリガーソース、レベル、スロープ(向き)を決めて観測の基準点(トリガー点)とする時、<br> | ||
トリガーソースとなる波形は、オシロスコープに接続されている信号のいずれかを選択できる。<br> | トリガーソースとなる波形は、オシロスコープに接続されている信号のいずれかを選択できる。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 7.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. レベルトリガーの設定'''</center><br> | <center>'''図. レベルトリガーの設定'''</center><br> | ||
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199行目: | 199行目: | ||
繰り返し現象を観測する場合は、ノーマルモードまたはオートモードを選択する。<br> | 繰り返し現象を観測する場合は、ノーマルモードまたはオートモードを選択する。<br> | ||
単発現象を観測する場合は、シングルモードを選択する。<br> | 単発現象を観測する場合は、シングルモードを選択する。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 8.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. トリガーモードの選択'''</center><br> | <center>'''図. トリガーモードの選択'''</center><br> | ||
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241行目: | 241行目: | ||
ただし、オシロスコープの精度は高くないので、測定した損失の確度を規定することは難しい。<br> | ただし、オシロスコープの精度は高くないので、測定した損失の確度を規定することは難しい。<br> | ||
このため、測定結果は目安として利用することになる。<br> | このため、測定結果は目安として利用することになる。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 9.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. スイッチング電源のスイッチング損失測定'''</center><br> | <center>'''図. スイッチング電源のスイッチング損失測定'''</center><br> | ||
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スイッチング損失を測定する際には、電圧と電流の位相を合わせる必要があるため、下図のようなツールを使用して測定前にスキュー調整を行う。<br> | スイッチング損失を測定する際には、電圧と電流の位相を合わせる必要があるため、下図のようなツールを使用して測定前にスキュー調整を行う。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 10.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. デスキューパルスジェネレーターとデスキューフィクスチャ'''</center><br> | <center>'''図. デスキューパルスジェネレーターとデスキューフィクスチャ'''</center><br> | ||
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257行目: | 257行目: | ||
オシロスコープに取り込んだ波形を切り出してそのままFFT演算を行うと、切り出した波形の両端が不連続となり、<br> | オシロスコープに取り込んだ波形を切り出してそのままFFT演算を行うと、切り出した波形の両端が不連続となり、<br> | ||
結果として、FFT演算した結果のパワースペクトラムがピークの近傍に漏れ出してしまう。<br> | 結果として、FFT演算した結果のパワースペクトラムがピークの近傍に漏れ出してしまう。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 11.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 時間窓長Tが入力信号周の整数倍でないときのFFT分析例'''</center><br> | <center>'''図. 時間窓長Tが入力信号周の整数倍でないときのFFT分析例'''</center><br> | ||
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そこで、取り込んだ波形に窓関数をかけて、漏れ(リーケージ)を防ぐようにする。<br> | そこで、取り込んだ波形に窓関数をかけて、漏れ(リーケージ)を防ぐようにする。<br> | ||
窓関数には様々なものがあるが、一般には方形(レクタンギュラ)、ハニング、ハミング、フラットトップ等がある。<br> | 窓関数には様々なものがあるが、一般には方形(レクタンギュラ)、ハニング、ハミング、フラットトップ等がある。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 12.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. ハニング窓をかけた時のFFT分析例'''</center><br> | <center>'''図. ハニング窓をかけた時のFFT分析例'''</center><br> | ||
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271行目: | 271行目: | ||
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時間ジッタには、周期ジッタ(P)、サイクル間ジッタ(C)、タイムインターバルエラー(TIE)があり、それぞれの関係は下図の通りである。<br> | 時間ジッタには、周期ジッタ(P)、サイクル間ジッタ(C)、タイムインターバルエラー(TIE)があり、それぞれの関係は下図の通りである。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 13.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. 様々なジッタ測定'''</center><br> | <center>'''図. 様々なジッタ測定'''</center><br> | ||
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280行目: | 280行目: | ||
== 波形データの印字・保存・通信 == | == 波形データの印字・保存・通信 == | ||
オシロスコープには、波形データを印字、保存、通信する機能がある。 | オシロスコープには、波形データを印字、保存、通信する機能がある。<br> | ||
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印字のためのプリンタをオシロスコープに搭載している機種もある。 | 印字のためのプリンタをオシロスコープに搭載している機種もある。<br> | ||
プリンタを内蔵していない製品は、外部のプリンタに観測結果を印字する機能を持っている。 | プリンタを内蔵していない製品は、外部のプリンタに観測結果を印字する機能を持っている。<br> | ||
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オシロスコープの制御やデータ転送は通信経由で行うことができるが、 | オシロスコープの制御やデータ転送は通信経由で行うことができるが、<br> | ||
製品によって対応している通信規格が異なるため、あらかじめ確認する必要がある。 | 製品によって対応している通信規格が異なるため、あらかじめ確認する必要がある。<br> | ||
最近の製品では、GPIB未対応の製品が多いため、GPIBを用いたシステムを構築する場合は、GPIB-USBアダプタを用意する必要がある。 | 最近の製品では、GPIB未対応の製品が多いため、GPIBを用いたシステムを構築する場合は、GPIB-USBアダプタを用意する必要がある。<br> | ||
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300行目: | 298行目: | ||
オシロスコープのケースに触れることによる感電事故の危険や、オシロスコープの破損の恐れがあるので絶対にしてはいけない。<br> | オシロスコープのケースに触れることによる感電事故の危険や、オシロスコープの破損の恐れがあるので絶対にしてはいけない。<br> | ||
コモンモード電位を持った信号を測定するときは、差動プローブもしくは絶縁プローブを使用する。<br> | コモンモード電位を持った信号を測定するときは、差動プローブもしくは絶縁プローブを使用する。<br> | ||
[[ファイル:Oscilloscope Basic 14.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>'''図. コモンモード電位を持った信号測定時の短絡事故'''</center><br> | <center>'''図. コモンモード電位を持った信号測定時の短絡事故'''</center><br> | ||
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