概要ラプラス変換の定義ラプラス変換の定義に関する例題ラプラス変換の存在条件基本的な関数のラプラス変換公式
下表のような原関数 と像関数 の対応関係を変換表として使用すれば、ラプラス変換を機械的に実行できる。
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条件
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単位階段関数 |
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デルタ関数 |
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法則
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条件
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線形法則 |
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線形法則 |
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相似法則 |
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第1移動法則 |
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第1移動法則 |
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第2移動法則 |
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- ※備考
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ラプラス変換公式を使用した例題線形法則相似法則第1移動法則第2移動法則微分法則
定理1:
は で定義された連続な関数で、以下を満たす定数Mとαが存在し、微分可能であるとする。
この時、 が区分的に連続であれば、 の時 が存在し、以下が成立する。
定理1の説明:
を微分することは、 のラプラス変換 をs倍して を減算することに対応する。
原関数を微分することは、像関数をs倍した後、定数 を減算することに対応する。
定理2:
において、 は連続な関数で、以下を満たす定数Mとαが存在すると仮定する。
この時、 において が区分的に連続であれば、 の時、 が存在し、以下が成立する。
定理2の説明:
原関数の世界で微分することは、像関数の世界では「sの多項式を作る」ことに対応する。
この定理の式はラプラス変換を使用して微分方程式を解く際に重要な役割を果たす。
微分方程式を解く際に必要となる公式:
が上記の定理の条件を満たしているとする。
この時、以下が成立する。
(1)
(2)
例題:
について以下を求めよ。
(1)
(2)
(3) (微分法則を使用する)
解答:
(1)
積の微分公式より、
(2)
の時、
(3)
の微分法則により、
これに、 を代入する。
すると、 となる。
積分法則tn積法則
定理:
は、 において区分的に連続で指数α位の関数とする。
この時、 が存在し、 とおくとき、以下が成立する。
説明:
原関数の世界で「関数を 倍する」ことは、像関数の世界では「関数を 回微分して 倍する」ことに対応する。
積法則の具体例:
は、先の定理の仮定を満たしているとする。
この時、以下が成立する。
(1) の場合:
(2) の場合:
(3) の場合:
例題:
積法則を使用して以下の値を求めよ。
解答:
とおくと、
積法則の の場合を適用すると以下が得られる。
ここで、合成関数の微分公式を使用して、
合成積
定義:
は において区分的に連続であるとする。
この時、以下の関数 を と の合成積(convolution)あるいは畳み込みという。
合成積の性質
合成積は、以下の法則を満たす。
(1) (交換法則)
(2) (結合法則)
- 合成積 の直観的意味
- 時刻 のとき、耳に到達する音の波形を とする。
- は、その時より だけ前の時刻に出た音の波形 を だけ増幅(あるいは減少)させた波形 の影響を受ける。
- 時刻 においては、 が から までの全ての影響を受けるので、それらを全部重ねあわせた波形 が耳に到達する。
- したがって、耳に到達する音の波形は、 となる。
定理:
は で区分的に連続な関数であり、かつ指数α位の関数とする。
とする時、 が存在し、以下が成立する。
注意:
と の(合成積ではない普通の)積のラプラス変換 については、一般に と は一致しない。
すなわち、
例題:
について、合成積のラプラス変換公式を使用して を求めよ。
解答:
ラプラス変換の基本公式より、
合成積のラプラス変換公式より、
ラプラス変換による微分方程式の解法ラプラス変換の応用
ラプラス変換は、微分方程式を解くために用いられる。
また、システムの安定性や過渡解の解析に用いられる。
主な応用分野
- 古典的自動制御: 伝達関数を求めるための計算手法。
- 電気回路: 過渡現象を表す微分方程式の解法。
他の積分変換との比較
フーリエ変換
フーリエ変換(Fourier transform)とラプラス変換では積分範囲と係数部分が異なる。
また、ラプラス変換の変数sに対応する変数が (i: 虚数単位)になる。
フーリエ変換は、ラプラス変換とは異なり、周波数分析に使用される。
フーリエ変換は、スイッチをON/OFFした後、時間が十分経過した後の電圧・電流の波形の分析に使用される。
ラプラス変換は、過渡状態の電圧・電流の分析に使用される。(過渡状態とは、スイッチをON/OFFした直後の状態である)
Z変換
Z変換(Z-transform)は、両側ラプラス変換を離散化したものである。
Z変換は、デジタル信号処理で用いられる。
変換を離散化することによりコンピュータで効率よく扱うことができるようになる。
離散フーリエ変換
離散フーリエ変換(DFT: Discrete Fouriertransform)は、フーリエ変換を離散化したものである。
離散フーリエ変換を高速に計算するためのアルゴリズムとして高速フーリエ変換(FFT: Fast Fouriertransform)がある。
これらの技術はデジタル信号処理で使用される。