応用数学 - 広義積分と無限積分

2023年9月3日 (日) 17:08時点におけるWiki (トーク | 投稿記録)による版 (→‎広義積分の定義)

概要

広義積分および無限積分について理解する。


極限の例題

例題:
 
について、以下の極限を求めよ。

(1)  
(2)  
(3)  
(4)  
(5)  

解答:
(1)
xを正の方向から1に近づけた極限なので、
 

(2)
xを負の方向から1に近づけた極限なので、
 

(3)
xを正と負の両方から近づけた極限である。
しかし、(1)(2)より、右側極限と左側極限は一致しない。
そのため、一定の値には収束しないので、
  は値なし。

(4)
xを限りなく大きくしたときの極限なので、
 

(5)
xを限りなく小さくしたときの極限なので、
 



連続な関数

定義:
関数    で連続とは、以下の条件を満たすことである。
(1)   が存在する。
(2)   が存在する。
(3)  

関数   が区間Iで連続とは、以下の条件を満たすことである。
区間Iの任意の値aについて、   で連続。



区分的に連続な関数

定義:
  で定義された関数   が以下の条件を満たすとき、    で区分的に連続(piecewisely continuous)であるという。

(1)    において有限個の点を除いて連続である。
(2)   の不連続な点cにおいては、以下で示す右側極限と左側極限が存在する。
     

   で区分的に連続であるとは、言い換えると以下の条件を満たすことである。
(1) 不連続な点があっても有限個である。
(2) 不連続な点では、値が    に発散したり振動したりしない。

このような区分的に連続な関数に対しては、連続な関数とほぼ同様に定積分を行うことができる。


下図に、区分的に連続な関数を示す。

図.   において区分的に連続な関数  



ラプラス変換では、このような関数を扱う。


区分的に滑らかな関数

定義:
  で定義された関数   が以下の条件(1)(2)を全て満たすとき、    で区分的に滑らか(piecewisely smooth)であるという。

(1)   がこの区間において区分的に連続である。
(2)   の導関数   がこの区間において区分的に連続である。(ただし、   に不連続点や、尖点がある場合、   はそれらの点を除いて考える)



広義積分

広義積分とは

定積分(definite integral)は、ある   の区間   上で連続な関数   で考えていた。
ここでは、     が発散してしまったり、定義されていない場合や、不連続の場合を考える。

このように、区間の端で不連続な   にまで拡張された定積分を広義積分(improper integral)という。
また、広義積分が収束するとき、広義積分可能(improper integrable)であるという。

広義積分の定義

定義1:
   で連続であるとする。
このとき、   における定積分を以下で定義する。

 

説明:
  となる   をとると、   において   は連続なので、通常の定積分   が考えられる。
その結果を   として右側極限を考えたのが上の定義式である。
関数により、収束する場合もあり、収束しない場合もある。



定義2:
   で連続であるとする。
このとき、   における定積分を以下で定義する。

 


定義3:
   で連続であるとする。
このとき、   における定積分を以下で定義する。

 


積分区間の分割

   において連続で、   で不連続な場合、以下のように積分区間を分割して考えればよい。

 

   において連続で、   で不連続な場合、
   で不連続であっても、  に関する   の右側極限と左側極限の値が有限の値に収束する場合には、普通の積分と同じように計算することができる。

一方、それら右側積分や左側積分の値が    に発散したり、振動したりする場合には、広義積分の収束・発散を調べる必要がある。

下図に、積分区間の分割の概要を示す。(この図は、上図の区分的に連続な関数の再掲である)

 


図.   において区分的に連続な関数  



広義積分の例題

例題:
関数  
のとき、以下の広義積分の値を求めよ。

 



解答:
   で不連続なので積分区間を分けて考える。
   において左側極限も右側極限も存在し、 において区分的に連続なので、通常の定積分と同じように計算できる。