計算の基礎
のベクトル空間内の2点AからBを結ぶ曲線経路Cがある。
この曲線上で、ベクトル の接線方向成分の大きさを表すスカラー関数 を考える。(sはAからの孤の長さである)
※接線はタンジェントラインと呼ぶため、接線方向成分の意味でtを添字にしている。
の線積分は、次式となる。
は、曲線経路Cの単位接線ベクトル とベクトル の内積として求まるため、以下のように記述できる。
この量をベクトル の線積分(接線線積分)という。
曲線経路Cをsのパラメータ(媒介変数)として、 と表すと、
単位接線ベクトル は、 となる。
ただし、 は、曲線経路Cを細かく分割した微小ベクトルであり、線素ベクトルと呼ばれる。
したがって、ベクトル の線積分は、以下のようにも記述できる。
記述方法が複数あるが、重要なことは、曲線経路Cにおいてベクトル場の接線成分を積分するということである。
例題.1
ベクトル関数 について、経路Cにおける以下の線積分を求めよ。
ただし、経路Cは放物線 の(0, 0)から(1, 2)に沿う曲線とする。
まず、経路Cをパラメータtで表示する。つまり、xやyをtの関数として記述する。
線積分を行う経路となる経路Cは放物線 の(0, 0)から(1, 2)である。
とすると、 で である。
「経路Cについて考える」ということは、「xとyが経路Cの方程式を満たす」ということである。
したがって、xとyはtの関数として以下のように記述できる。
よって、xとyをtでそれぞれ微分すると以下のようになる。
式を変形するときのポイントは、 の意味から、 と記述する点である。
この例題では、ベクトル関数はz成分は無いため、 としている。
上記のポイントを踏まえて、線積分を計算する。
ここで、ドット(⋅)は内積を表している。
ここで、 を成分表示すると、 である。
同様に、 の成分表示は、 である。
次に、xとyをパラメータt(ここでは、 を代入する)で記述する。
これが、経路Cを満たすように式変形するということである。
例題. 2
ベクトル場 (aは正の定数)において、
経路Cを )とする時、
線積分 を求めよ。
をtで微分すると、
となり、
である。
を成分表示すると、 となる。
また、 を成分表示すると、 である。
内積はx成分、y成分、z成分それぞれ乗算した後に加算して求めるため、以下のように計算できる。
例題. 3
aを定数として、 というベクトル場を考える。
この時、次の問を求めよ。
(1) 下図左のように、点A : (1, 0, 0)、点B : (1, 1, 0)、点C : (0, 1, 0)の3点をつないだ閉曲線cを考える。
この閉曲線Cに沿った の線積分を求めよ。
ただし、線積分の向きは、下図左の矢印の方向(反時計方向)を正にとる。
(2) 下図右のように、点A : (1, 0, 0)から点C : (0, 1, 0)まで、原点Oを中心とする半径1の円の円周に沿って曲線ℓを引く。
この曲線lに沿った の線積分を求めよ。
ただし、線積分の向きは、下図右の矢印の方向(反時計方向)を正にとる。
(1)の求め方
経路C上の位置ベクトル を1つの変数で表す。
経路Cは3本の線分から構成されているため、各線分の線積分を計算して加算する。
(i) 線分AB上での線積分
線分AB上の位置ベクトルを とする時、 とおくと、 となる。
より、線素ベクトル は、 となる。
さらに、ベクトル場 に位置ベクトル を適用( を代入)すると、 となる。
よって、経路ABの矢印の向きを考慮すると、積分範囲は となるため、線分AB上での線積分は次式となる。
(ii) 線分BC上での線積分
線分BC上の位置ベクトルを とする時、 とおくと、 となる。
より、線素ベクトル は、 となる。
さらに、ベクトル場 に位置ベクトル を適用( を代入)すると、 となる。
よって、経路BCの矢印の向きを考慮すると、積分範囲は となるため、線分BC上での線積分は次式となる。
(iii) 線分CA上での線積分
線分CA上の位置ベクトルを とする時、 とおくと、 となる。
より、線素ベクトル は、 となる。
さらに、ベクトル場 に位置ベクトル を適用( を代入)すると、 となる。
よって、経路CAの矢印の向きを考慮すると、積分範囲は となるため、線分CA上での線積分は次式となる。
したがって、 となる。
(2)の求め方
経路lは原点Oを中心とする半径1の円である。
経路l上の位置ベクトルを とする時、極座標表示を用いて とおくと、 となる。
より、線素ベクトル は、 となる。
さらに、ベクトル場 に位置ベクトル を適用( を代入)すると、 となる。
よって、経路lの矢印の向きを考慮すると、積分範囲は となるため、経路l上での線積分は次式となる。