ある変数で積分する際は他の変数を固定(定数とみなして)して積分して、次の変数で積分する際も同様に他の変数を固定して積分・・・を繰り返す。
積分変数を逐次変えて積分を進めていくことから、このような積分を逐次積分と呼ぶ。
例えば、被積分関数が2変数関数f(x, y)の場合、先にyを固定してxで積分して、次にyで積分するという手順となる。
積分変数を選ぶ順番、例えば、上記の場合では、先にxで積分するかyで積分するかは物理数学の範囲では特に気にしなくてよい。
もし、何らかの指定がある場合は、その順序で計算する。
例題. 次の重積分を求めよ。
(1)
(2)
(1)
(2)
として部分積分を用いる。
次に、 として部分積分を用いる。</math>
与えられた座標系でそのまま積分できる(変数変換する必要がない)場合から扱う。
このパターンの最大の特徴は、積分する順番が決まっていることであり、最初に積分領域が変数に依存する積分から実行する。
例えば、2変数関数f(x, y)を のように積分する場合、yの積分範囲がxに依存するため、先にyで積分した後にxで積分するという順番をとる。
この順番になる理由は、yでの積分結果がxの関数になるためであり、これを先に計算しないとxでの積分の被積分関数が決定しないからである。
そのため、被積分関数が変数分離できる場合でも、同時並行で各変数での積分を実行することはできない。
積分領域が変数に依存する積分から実行して、他の変数の積分の被積分関数を決定させる必要がある。
例題. 次の重積分を求めよ。
(1)
(2)
(1)
積分領域は右図のようになる。
被積分関数が変数分離できる形であるが、yの積分がxに依存しているため、まず、yで積分する。
次に、xで積分する。
ここで、第2項において、 とおいて変数変換を行う。
となる。
また、 となる。
上記を代入すると、以下のようになる。
(2)
まず、yでの積分がxに依存しているため、yで積分する。
次に、xで積分する。
上記までのパターンでは、積分領域が比較的単純だった。
しかし、積分領域が複雑になる場合、計算が煩雑になったり、そもそも与えられた座標系では解析的に積分できない場合がある。
その場合には、座標変換によって積分変数の変換を行い、積分領域を単純化した上で積分計算を進めていく。
積分変数の変換は、次のように行う。
ある多変数関数f(x1, ..., xn)について、領域Dにわたって積分することを考える。
ここで、 の変数変換を行う場合、変数変換後の領域をD'とする時、
上記の積分は、次式のようになる。
ここで、 は、ヤコビアンの絶対値である。
すなわち、積分変数を変換したのち、被積分関数にヤコビアンの絶対値を乗算すればよい。
例題. 次の重積分を求めよ。
(1)
(2)
(1)
与えられた座標系では、積分領域Dは下図左のようにドーナツ型になる。
まず、極座標系(r, θ)に座標変換する。
この時、新たな積分領域D'は下図右のようになる。
また、ヤコビアンは、 となるため、求める多重積分は次式となる。
(2)
与えられた座標系では、積分領域Dは下図のように半球型になる。
そのため、極座標系 に座標変換する。
また、ヤコビアンは、 となる。
したがって、求める多重積分は次式となる。