C++の基礎 - タプル

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概要

C++のタプルは、異なる型の要素を固定長で格納できるコンテナ型である。
C++11から導入された機能であり、std::tupleとして実装されている。

最大の特徴は、複数の異なる型の値を1つの単位として扱えることである。
例えば、整数、文字列、浮動小数点数といった異なる型の値を1つのタプルにまとめることができる。

関数やメソッドから複数の値を返すこともできる。
従来の方法では、参照引数を使用する等の工夫が必要であったが、タプルを使用すれば複数の値を直接返却できる。

C++17からは構造化束縛という機能も導入されており、タプルの要素を簡単に個別の変数に分解できるようになった。
これにより、可読性の高いコードを記述することができる。

また、std::tieを使用することにより、既存の変数にタプルの値を展開、タプル同士の比較を行うことも可能である。

ただし、要素数は固定長であり、実行時に要素数を変更することはできないという制約がある。
この点は、可変長のコンテナ型であるvectorやlistとは異なる。

タプルは、複数の戻り値が必要な関数の実装、または、複数の値をまとめて扱う必要がある場合に有効となる。


タプルの作成

 #include <tuple>
 
 std::tuple<int, std::string, double> t = {1, "hello", 3.14};



要素へのアクセス

 #include <tuple>
 
 int first = std::get<0>(t);            // インデックスによるアクセス
 auto str  = std::get<std::string>(t);  // 型によるアクセス



std::tieを使用した比較や代入

 #include <tuple>
 
 int         x;
 std::string y;
 double      z;
 
 std::tie(x, y, z) = t;  // タプルの要素を既存の変数に展開



構造化束縛を使用して分解 (C++17以降)

 // 構造化束縛の例
 
 auto [num, text, value] = t;  // 各要素を個別の変数に分解



外部プロセスから構造化データを受け取る

C++のmain関数の戻り値は、規格上、int型に限定されている。
そのため、tuple型を直接戻り値とすることはできない。

外部プロセスの戻り値も同様、一般的なOSではint型 (終了コード) のみを返す。

もし、外部プロセスからタプル型のデータを受け取る場合、以下に示すような方法がある。

  • 構造化データをファイルやパイプを通じて受け渡す。
  • 環境変数を使用する。
  • 標準出力に構造化データ (JSON等) を出力して、親プロセスで解析する。


標準出力を使用する場合

この方法では、JSON形式でデータを受け渡すことで複数の値を構造化して取得することができる。

 #include <cstdio>
 #include <string>
 #include <array>
 #include <nlohmann/json.hpp>
 
 std::tuple<int, char, std::string> execute_piyo()
 {
    std::array<char, 128> buffer;
    std::string           result;
 
    // 外部プロセスの実行
    FILE* pipe = popen("./piyo", "r");
    while (fgets(buffer.data(), buffer.size(), pipe) != nullptr) {
        result += buffer.data();
    }
 
    // JSON形式のデータの取得
    int status = pclose(pipe);
 
    // JSON形式のデータの解析
    auto j = nlohmann::json::parse(result);
 
    return std::make_tuple(
       j["code"].get<int>(),
       j["character"].get<char>(),
       j["message"].get<std::string>()
    );
 }


 // これは、外部プロセスとして実行される
 
 #include <iostream>
 #include <nlohmann/json.hpp>
 
 int main()
 {
    nlohmann::json result = {
       {"code", 1},
       {"character", 'a'},
       {"message", "hello"}
    };
 
    // 標準出力 (送信するJSON形式のデータ)
    std::cout << result.dump() << std::endl;
 
    return 0;
 }