「応用数学 - 広義積分と無限積分」の版間の差分

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== 区分的に滑らかな関数 ==
定義:
<math>a \le x \le b</math> で定義された関数 <math>f(x)</math> が以下の条件(1)(2)を全て満たすとき、 <math>f(x)</math> は <math>a \le x \le b</math> で区分的に滑らか(piecewisely smooth)であるという。
(1) <math>f(x)</math> がこの区間において区分的に連続である。
(2) <math>f(x)</math> の導関数 <math>\frac{df(x)}{dx}</math> がこの区間において区分的に連続である。(ただし、 <math>f(x)</math> に不連続点や、尖点がある場合、 <math>\frac{df(x)}{dx}</math> はそれらの点を除いて考える)
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== 広義積分 ==
==== 広義積分とは ====
定積分(definite integral)は、ある <math>x</math> の区間 <math>a \le x \le b</math> 上で連続な関数 <math>f(x)</math> で考えていた。<br>
ここでは、 <math>x = a</math> や <math>x = b</math> で <math>f(x)</math> が発散してしまったり、定義されていない場合や、不連続の場合を考える。<br>
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このように、区間の端で不連続な <math>x</math> にまで拡張された定積分を広義積分(improper integral)という。<Br>
また、広義積分が収束するとき、広義積分可能(improper integrable)であるという。<br>
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==== 広義積分の定義 ====
定義1:
<math>f(x)</math> は <math>a < x \le b</math> で連続であるとする。
このとき、 <math>a < x \le b</math> における定積分を以下で定義する。
<math>\int_{a}^{b} {f(x)} \, dx = \lim_{\alpha \to a + 0} {\int_{\alpha}^{b} {f(x)} \, dx}</math>
説明:
<math>a < \alpha \le b</math> となる <math>\alpha</math> をとると、 <math>\alpha \le x \le b</math> において <math>f(x)</math> は連続なので、通常の定積分 <math>\int_{b}^{\alpha} {f(x)} \, dx</math> が考えられる。
その結果を <math>\alpha \longrightarrow a + 0</math> として右側極限を考えたのが上の定義式である。
関数により、収束する場合もあり、収束しない場合もある。
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定義2:
<math>f(x)</math> は <math>a \le x < b</math> で連続であるとする。
このとき、 <math>a \le x < b</math> における定積分を以下で定義する。
<math>\int_{b}^{a} {f(x)} \, dx = \lim_{\beta \to b - 0} {\int_{a}^{\beta} {f(x)} \, dx}</math>
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定義3:
<math>f(x)</math> は <math>a < x < b</math> で連続であるとする。
このとき、 <math>a < x < b</math> における定積分を以下で定義する。
<math>\int_{b}^{a} {f(x)} \, dx = \lim_{\begin{matrix} \alpha \to a + 0 \\ \beta \to b - 0 \end{matrix}} {\int_{\alpha}^{\beta} {f(x)} \, dx}</math>
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==== 積分区間の分割 ====
<math>f(x)</math> が <math>a \le x < c, \, c < x \le b</math> において連続で、 <math>x = c</math> で不連続な場合、以下のように積分区間を分割して考えればよい。<br>
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<math>
\begin{align}
\int_{b}^{a} {f(x) \, dx} &= \int_{a}^{c} {f(x) \, dx} + \int_{c}^{b} {f(x) \, dx} \\
&= \lim_{\gamma_{1} \to c - 0} {\int_{a}^{\gamma_{1}} {f(x) \, dx}} + \lim_{\gamma_{2} \to c + 0} {\int_{\gamma_{2}}^{b} {f(x) \, dx}}
\end{align}
</math><br>
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<math>f(x)</math> が <math>a \le x < c, \, c < x \le b</math> において連続で、 <math>x = c</math> で不連続な場合、<br>
<math>f(x)</math> が <math>x = c</math> で不連続であっても、<math>c</math> に関する <math>f(x)</math> の右側極限と左側極限の値が有限の値に収束する場合には、普通の積分と同じように計算することができる。<br>
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一方、それら右側積分や左側積分の値が <math>+ \infty</math> や <math>- \infty</math> に発散したり、振動したりする場合には、広義積分の収束・発散を調べる必要がある。<br>
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下図に、積分区間の分割の概要を示す。<br>
図. <math>a \le x \le b</math> において区分的に連続な関数 <math>f(x)</math><br>
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__FORCETOC__
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[[カテゴリ:解析学]]
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2023年9月3日 (日) 16:44時点における版

概要

広義積分および無限積分について理解する。


極限の例題

例題:

について、以下の極限を求めよ。

(1) 
(2) 
(3) 
(4) 
(5) 

Improper Integral 1.png
解答:
(1)
xを正の方向から1に近づけた極限なので、


(2)
xを負の方向から1に近づけた極限なので、


(3)
xを正と負の両方から近づけた極限である。
しかし、(1)(2)より、右側極限と左側極限は一致しない。
そのため、一定の値には収束しないので、
 は値なし。

(4)
xを限りなく大きくしたときの極限なので、


(5)
xを限りなく小さくしたときの極限なので、



連続な関数

定義:
関数  で連続とは、以下の条件を満たすことである。
(1)  が存在する。
(2)  が存在する。
(3) 

関数  が区間Iで連続とは、以下の条件を満たすことである。
区間Iの任意の値aについて、 で連続。



区分的に連続な関数

定義:
 で定義された関数  が以下の条件を満たすとき、  で区分的に連続(piecewisely continuous)であるという。

(1)  において有限個の点を除いて連続である。
(2)  の不連続な点cにおいては、以下で示す右側極限と左側極限が存在する。
    

 で区分的に連続であるとは、言い換えると以下の条件を満たすことである。
(1) 不連続な点があっても有限個である。
(2) 不連続な点では、値が  に発散したり振動したりしない。

このような区分的に連続な関数に対しては、連続な関数とほぼ同様に定積分を行うことができる。


下図に、区分的に連続な関数を示す。

Improper Integral 2.png
図. において区分的に連続な関数



ラプラス変換では、このような関数を扱う。


区分的に滑らかな関数

定義:
 で定義された関数  が以下の条件(1)(2)を全て満たすとき、  で区分的に滑らか(piecewisely smooth)であるという。

(1)  がこの区間において区分的に連続である。
(2)  の導関数  がこの区間において区分的に連続である。(ただし、  に不連続点や、尖点がある場合、  はそれらの点を除いて考える)



広義積分

広義積分とは

定積分(definite integral)は、ある の区間 上で連続な関数 で考えていた。
ここでは、 が発散してしまったり、定義されていない場合や、不連続の場合を考える。

このように、区間の端で不連続な にまで拡張された定積分を広義積分(improper integral)という。
また、広義積分が収束するとき、広義積分可能(improper integrable)であるという。

広義積分の定義

定義1:
 で連続であるとする。
このとき、  における定積分を以下で定義する。



説明:
 となる  をとると、  において  は連続なので、通常の定積分  が考えられる。
その結果を  として右側極限を考えたのが上の定義式である。
関数により、収束する場合もあり、収束しない場合もある。


定義2:
 で連続であるとする。
このとき、  における定積分を以下で定義する。



定義3:
 で連続であるとする。
このとき、  における定積分を以下で定義する。



積分区間の分割

において連続で、 で不連続な場合、以下のように積分区間を分割して考えればよい。



において連続で、 で不連続な場合、
で不連続であっても、 に関する の右側極限と左側極限の値が有限の値に収束する場合には、普通の積分と同じように計算することができる。

一方、それら右側積分や左側積分の値が に発散したり、振動したりする場合には、広義積分の収束・発散を調べる必要がある。

下図に、積分区間の分割の概要を示す。

図. において区分的に連続な関数