「応用数学 - 広義積分と無限積分」の版間の差分
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図. において区分的に連続な関数 図. において区分的に連続な関数
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<math>f(x)</math> が絶対可積分ならば、以下が成立する。 (逆は成立するとは限らない) | <math>f(x)</math> が絶対可積分ならば、以下が成立する。 (逆は成立するとは限らない) | ||
<math>\lim_{x \to \pm \infty} {f(x)} = 0</math> | <math>\lim_{x \to \pm \infty} {f(x)} = 0</math> | ||
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==== 無限積分の例題 ==== | |||
例題: | |||
以下の無限積分を求めよ。 | |||
<math>\int_{0}^{+ \infty} {e^{-x} \, dx}</math> | |||
解答: | |||
無限積分の定義に従って書き下して計算する。 | |||
<math> | |||
\begin{align} | |||
\int_{0}^{+ \infty} {e^{-x} \, dx} &= \lim_{\beta \to + \infty} {\int_{0}^{\beta} {e^{-x} \, dx}} \\ | |||
&= \lim_{\beta \to + \infty} \Big[ -e^{-x} \Big]_{0}^{\beta} \\ | |||
&= \lim_{\beta \to + \infty} {(-e^{- \beta} + e^{0})} \\ | |||
&= \lim_{\beta \to + \infty} {(-e^{- \beta} + 1)} \\ | |||
&= 0 + 1 \qquad \because \lim_{\beta \to \infty} {-e^{- \beta}} = 0 \\ | |||
&= 1 | |||
\end{align} | |||
</math> | |||
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2023年9月4日 (月) 09:38時点における版
概要
広義積分および無限積分について理解する。
極限の例題
例題: について、以下の極限を求めよ。 (1) (2) (3) (4) (5)
解答: (1) xを正の方向から1に近づけた極限なので、 (2) xを負の方向から1に近づけた極限なので、 (3) xを正と負の両方から近づけた極限である。 しかし、(1)(2)より、右側極限と左側極限は一致しない。 そのため、一定の値には収束しないので、 は値なし。 (4) xを限りなく大きくしたときの極限なので、 (5) xを限りなく小さくしたときの極限なので、
連続な関数
定義: 関数 が で連続とは、以下の条件を満たすことである。 (1) が存在する。 (2) が存在する。 (3) 関数 が区間Iで連続とは、以下の条件を満たすことである。 区間Iの任意の値aについて、 は で連続。
区分的に連続な関数
定義: で定義された関数 が以下の条件を満たすとき、 は で区分的に連続(piecewisely continuous)であるという。 (1) は において有限個の点を除いて連続である。 (2) の不連続な点cにおいては、以下で示す右側極限と左側極限が存在する。 が で区分的に連続であるとは、言い換えると以下の条件を満たすことである。 (1) 不連続な点があっても有限個である。 (2) 不連続な点では、値が や に発散したり振動したりしない。 このような区分的に連続な関数に対しては、連続な関数とほぼ同様に定積分を行うことができる。
下図に、区分的に連続な関数を示す。
ラプラス変換では、このような関数を扱う。
区分的に滑らかな関数
定義: で定義された関数 が以下の条件(1)(2)を全て満たすとき、 は で区分的に滑らか(piecewisely smooth)であるという。 (1) がこの区間において区分的に連続である。 (2) の導関数 がこの区間において区分的に連続である。(ただし、 に不連続点や、尖点がある場合、 はそれらの点を除いて考える)
広義積分
広義積分とは
定積分(definite integral)は、ある の区間 上で連続な関数 で考えていた。
ここでは、 や で が発散してしまったり、定義されていない場合や、不連続の場合を考える。
このように、区間の端で不連続な にまで拡張された定積分を広義積分(improper integral)という。
また、広義積分が収束するとき、広義積分可能(improper integrable)であるという。
広義積分の定義
定義1: は で連続であるとする。 このとき、 における定積分を以下で定義する。 説明: となる をとると、 において は連続なので、通常の定積分 が考えられる。 その結果を として右側極限を考えたのが上の定義式である。 関数により、収束する場合もあり、収束しない場合もある。
定義2: は で連続であるとする。 このとき、 における定積分を以下で定義する。
定義3: は で連続であるとする。 このとき、 における定積分を以下で定義する。
積分区間の分割
が において連続で、 で不連続な場合、以下のように積分区間を分割して考えればよい。
が において連続で、 で不連続な場合、
が で不連続であっても、 に関する の右側極限と左側極限の値が有限の値に収束する場合には、普通の積分と同じように計算することができる。
一方、それら右側積分や左側積分の値が や に発散したり、振動したりする場合には、広義積分の収束・発散を調べる必要がある。
下図に、積分区間の分割の概要を示す。(この図は、上図の区分的に連続な関数の再掲である)
広義積分の例題
例題: 関数 のとき、以下の広義積分の値を求めよ。
解答: は で不連続なので積分区間を分けて考える。 は において左側極限も右側極限も存在し、において区分的に連続なので、通常の定積分と同じように計算できる。
無限積分
無限積分とは
f(x)の積分区間が無限区間となっている場合の定積分を考えることができる。
積分区間を無限の区間に拡張した定積分を無限積分という。
また、無限積分が収束するとき、無限積分可能であるという。
無限積分に関する収束条件が知られている。
無限積分の定義
定義1: で定義された区分的に連続な関数 に対して、無限区間の定積分を以下で定義する。 説明: が で区分的に連続な場合、 となる をとると、 では は区分的に連続なので、定積分 は可能である。 そこで、 の時の極限を考える。
定義2: で定義された区分的に連続な関数 に対して、無限区間の定積分を以下で定義する。 定義3: から で定義された区分的に連続な関数 に対して、無限区間の定積分を以下で定義する。
無限積分の収束
定理: で定義された区分的に連続な関数 に対して、 を満たす定数Mが存在すれば、以下の無限積分は収束する。
絶対可積分な関数
定義: が以下を満たすとき、 は絶対可積分(absolutely integrable)であるという。 が絶対可積分ならば、以下が成立する。 (逆は成立するとは限らない)
無限積分の例題
例題: 以下の無限積分を求めよ。 解答: 無限積分の定義に従って書き下して計算する。