「ベクトル - 内積と外積」の版間の差分
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== ベクトルの外積の幾何学的な意味 == | == ベクトルの内積 == | ||
==== ベクトルの内積の求め方 ==== | |||
* 2次元ベクトルの内積の計算方法 | |||
*: <math>\vec{v} \cdot \vec{w} = \left[ \begin{array}{cc} v_1 \\ v_2 \end{array} \right] \cdot \left[ \begin{array}{cc} w_1 \\ w_2 \end{array} \right] = v_1 \cdot w_1 + v_2 \cdot w_2</math> | |||
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* 3次元ベクトルの内積の計算方法 | |||
*: <math>\vec{v} \cdot \vec{w} = \left[ \begin{array}{cc} v_1 \\ v_2 \\ v_3 \end{array} \right] \cdot \left[ \begin{array}{cc} w_1 \\ w_2 \\ w_3 \end{array} \right] = v_1 \cdot w_1 + v_2 \cdot w_2 + v_3 \cdot w_3</math> | |||
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==== ベクトルの内積の意味 ==== | |||
2つのベクトル <math>\vec{v} = (3, 0), \, \vec{w} = (2, 3)</math> があるとする。<br> | |||
この2つのベクトルの内積は、次式となる。<br> | |||
<math>\vec{v} \cdot \vec{w} = \left[ \begin{array}{cc} 3 \\ 0 \end{array} \right] \cdot \left[ \begin{array}{cc} 2 \\ 3 \end{array} \right] = 3 \cdot 2 + 0 \cdot 3 = 6</math><br> | |||
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これは、<math>\vec{v}</math> を1行2列の変換行列Vとして扱う場合の線形変換 <math>V \vec{w}</math> の計算と等価である。<br> | |||
つまり、2次元ベクトルを1行2列の行列で線形変換するということは、2次元平面上のベクトルを1次元直線上のベクトルに変換することを意味する。<br> | |||
<math>V \vec{w} = \left[ \begin{array}{cc} 3 & 0 \end{array} \right] \left[ \begin{array}{cc} 2 \\ 3 \end{array} \right] = 3 \cdot 2 + 0 \cdot 3 = 6</math><br> | |||
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したがって、ベクトルの内積とは、1行n列の射影行列とベクトルの積であり、2次元や3次元のものを1次元化すること(= 直線上に射影すること)である。<br> | |||
(ベクトルの内積 <math>\vec{v} \cdot \vec{w}</math> とは、一方のベクトルを他方のベクトルの直線上に射影(1次元化)したもの)<br> | |||
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==== ベクトルの内積の性質 ==== | |||
* 直交するベクトルの内積は0 | |||
*: 2つのベクトルが直交している時、内積の値は0となる。 | |||
*: 射影とは、一方のベクトルの真上から光を当てた場合、そのベクトル上にできる他方のベクトルの影であるため、射影した時の長さが0になるからである。 | |||
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* <math>\vec{v} \cdot \vec{w}</math> と<math>\vec{w} \cdot \vec{v}</math> の値は同じ | |||
*: ベクトルの内積において、計算する順序は、どちらの直線上(部分空間上)に射影するかというだけの違いでしかない。 | |||
*: どちらの直線上に射影しようとも、線形変換としては、複数次元のベクトルを他方のベクトルの部分空間上に映し出すものであることは同じであるため、その内積の値は同じとなる。 | |||
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== ベクトルの外積 == | |||
==== ベクトルの外積の幾何学的な意味 ==== | |||
ベクトルの外積とは、2つのベクトルが作る平行四辺形に対して、垂直方向に伸びる新しいベクトルである。(ベクトルの外積の解はベクトル)<br> | ベクトルの外積とは、2つのベクトルが作る平行四辺形に対して、垂直方向に伸びる新しいベクトルである。(ベクトルの外積の解はベクトル)<br> | ||
ベクトルの外積で求められるベクトルの長さは、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積と等しくなる。<br> | ベクトルの外積で求められるベクトルの長さは、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積と等しくなる。<br> | ||
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なお、垂直方向とは、平行四辺形に対して、真上の方向と真下の方向という2つの場合があり、外積の方向は、右手の法則で判断することができる。<br> | なお、垂直方向とは、平行四辺形に対して、真上の方向と真下の方向という2つの場合があり、外積の方向は、右手の法則で判断することができる。<br> | ||
<math>\vec{v}</math> を人差し指、<math>\vec{w}</math> を中指とする場合、外積 <math>\vec{v} \times \vec{w}</math> の方向は親指の方向となる。<br> | <math>\vec{v}</math> を人差し指、<math>\vec{w}</math> を中指とする場合、外積 <math>\vec{v} \times \vec{w}</math> の方向は親指の方向となる。<br> | ||
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==== ベクトルの外積の計算方法 ==== | |||
== ベクトルの外積の計算方法 == | |||
ベクトルの外積の計算方法を、次式に示す。<br> | ベクトルの外積の計算方法を、次式に示す。<br> | ||
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==== ベクトルの外積の長さ ==== | |||
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ベクトルの外積の長さは、三平方の定理を用いて、次式のように求めることができる。<br> | ベクトルの外積の長さは、三平方の定理を用いて、次式のように求めることができる。<br> | ||
<math>\sqrt{(v_2 w_3 - w_2 v_3)^2 + {-(v_1 w_3 + w_1 v_3)}^2 + (v_1 w_2 - w_1 v_2)^2}</math><br> | <math>\sqrt{(v_2 w_3 - w_2 v_3)^2 + {-(v_1 w_3 + w_1 v_3)}^2 + (v_1 w_2 - w_1 v_2)^2}</math><br> | ||
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ベクトルの外積の長さと、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積は等しいため、この方法により、平行四辺形の面積を求めることもできる。<br> | ベクトルの外積の長さと、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積は等しいため、この方法により、平行四辺形の面積を求めることもできる。<br> | ||
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==== ベクトルの外積の性質 ==== | |||
== ベクトルの外積の性質 == | |||
ある2つのベクトルの外積は、そのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しい。<br> | ある2つのベクトルの外積は、そのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しい。<br> | ||
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2022年6月2日 (木) 15:44時点における最新版
概要
ベクトルの内積とは、ベクトル に対して垂直な光を当てる時、ベクトル 上にできるベクトル の射影の長さと、元のベクトル の長さとの積のことである。
ベクトル がある時、外積は と表すため、ドット積とも呼ばれる。
ベクトルの外積とは、2本のベクトルが作る平行四辺形に対して、垂直な方向に働く新しいベクトルのことである。
ベクトル がある時、外積は と表すため、クロス積とも呼ばれる。
ベクトルの外積は、線形代数において幅広く使われる重要な概念であるため、線形代数の幾何学的なイメージを深めることができる。
ベクトルの内積
ベクトルの内積の求め方
- 2次元ベクトルの内積の計算方法
- 3次元ベクトルの内積の計算方法
ベクトルの内積の意味
2つのベクトル があるとする。
この2つのベクトルの内積は、次式となる。
これは、 を1行2列の変換行列Vとして扱う場合の線形変換 の計算と等価である。
つまり、2次元ベクトルを1行2列の行列で線形変換するということは、2次元平面上のベクトルを1次元直線上のベクトルに変換することを意味する。
したがって、ベクトルの内積とは、1行n列の射影行列とベクトルの積であり、2次元や3次元のものを1次元化すること(= 直線上に射影すること)である。
(ベクトルの内積 とは、一方のベクトルを他方のベクトルの直線上に射影(1次元化)したもの)
ベクトルの内積の性質
- 直交するベクトルの内積は0
- 2つのベクトルが直交している時、内積の値は0となる。
- 射影とは、一方のベクトルの真上から光を当てた場合、そのベクトル上にできる他方のベクトルの影であるため、射影した時の長さが0になるからである。
- と の値は同じ
- ベクトルの内積において、計算する順序は、どちらの直線上(部分空間上)に射影するかというだけの違いでしかない。
- どちらの直線上に射影しようとも、線形変換としては、複数次元のベクトルを他方のベクトルの部分空間上に映し出すものであることは同じであるため、その内積の値は同じとなる。
ベクトルの外積
ベクトルの外積の幾何学的な意味
ベクトルの外積とは、2つのベクトルが作る平行四辺形に対して、垂直方向に伸びる新しいベクトルである。(ベクトルの外積の解はベクトル)
ベクトルの外積で求められるベクトルの長さは、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積と等しくなる。
なお、垂直方向とは、平行四辺形に対して、真上の方向と真下の方向という2つの場合があり、外積の方向は、右手の法則で判断することができる。
を人差し指、 を中指とする場合、外積 の方向は親指の方向となる。
ベクトルの外積の計算方法
ベクトルの外積の計算方法を、次式に示す。
これは、次式のように、基底ベクトル を1列目の要素に入れて、ベクトル をそれぞれ2列目と3列目の要素にした3次の行列式を解くことと同様である。
ベクトルの外積の長さ
ベクトルの外積の長さは、三平方の定理を用いて、次式のように求めることができる。
ベクトルの外積の長さと、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積は等しいため、この方法により、平行四辺形の面積を求めることもできる。
ベクトルの外積の性質
ある2つのベクトルの外積は、そのベクトルが作る平行四辺形の面積に等しい。
-
- ベクトルの外積において、2つのベクトルを交換する時、ベクトルが伸びる方向が反対になるという性質がある。
- ベクトルの外積において、2つのベクトルを交換する時、ベクトルが伸びる方向が反対になるという性質がある。
-
- ベクトルの外積 において、一方のベクトルがS倍になる時、その外積もS倍になる。
- または、 である。
- また、一方がS1倍になり、他方がS2倍になる時、外積はS1 S2倍になる。つまり、 である。
- 平行するベクトルの外積は0
- 平行なベクトル同士の外積は、0になる。
- これは、2つのベクトルが平行の場合、平行四辺形を作ることができず、その面積が0になるからである。
- また、2つのベクトルが直交する場合、平行四辺形の面積が最大になるため、外積の長さも最大になる。