「トランジスタ - エミッタ接地回路・コレクタ接地回路・ベース接地回路」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
218行目: 218行目:
*: 高周波成分の増幅度が下がってしまう。
*: 高周波成分の増幅度が下がってしまう。
*: 上式より電圧利得AVが大きければ大きいほど、カットオフ周波数が低くなることが分かる。
*: 上式より電圧利得AVが大きければ大きいほど、カットオフ周波数が低くなることが分かる。
<br><br>
== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ) ==
===== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)とは =====
コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)は、トランジスタを使用した基本的な増幅回路の1つである。<br>
入力と出力の共通端子がコレクタであるため、コレクタ接地回路と呼ばれる。入力電圧V<sub>IN</sub>と出力電圧V<sub>OUT</sub>に直接接続されていない端子がコレクタなので、これが入出力共通端子となる。<br>
<br>
コレクタ接地回路の回路図と入出力波形を下図に示す。ベース端子が入力、エミッタ端子が出力となる。<br>
[[ファイル:Circuit Transistor 11.jpg|フレームなし|中央]]
<br>
出力電圧VOUTは、<math>V_{OUT} = V_{IN} − V_{BE}</math>となる。(理想的には、<math>V_{OUT} = V_{IN}</math>である)
つまり、出力電圧V<sub>OUT</sub>が入力電圧V<sub>IN</sub>を追従するように動作する回路となっており、その特徴からエミッタフォロワ(エミッタ(出力)がフォロー(入力を追いかける))とも呼ばれる。<br>
また、コレクタ接地回路はコレクタ共通回路(Common Collector)、電圧フォロワ回路(Voltage Follower)とも呼ばれる。<br>
<br>
<u>※補足</u><br>
<u>エミッタ接地回路は、MOSFETにおけるドレイン接地回路(ソースフォロワ回路)のトランジスタ版である。</u><br>
<br>
===== コレクタ接地回路を実際に使用する時の回路 =====
上記セクションの図は、原理を示すために用いられる回路図であり、実際の回路で使用する際は、下図右のように使用する。<br>
[[ファイル:Circuit Transistor 12.jpg|フレームなし|中央]]
<br>
コレクタ端子は電源V<sub>CC</sub>に接続しているが、交流的には接地されている。(そのため、コレクタ接地回路と呼ばれる)<br>
交流等価回路上では、直流電圧源は短絡と見なせるため、コレクタが接地しているというわけである。<br>
<br>
抵抗R<sub>1</sub>とR<sub>2</sub>は電源電圧V<sub>CC</sub>を分圧して、ベースに入力するためのバイアス抵抗である。<br>
入力電圧V<sub>IN</sub>と出力電圧V<sub>OUT</sub>に接続されているコンデンサは直流成分をカットするためのカップリングコンデンサである。<br>
<br>
コレクタ接地回路は、下図の回路のように、NPNトランジスタでもPNPトランジスタでも作成することができる。<br>
[[ファイル:Circuit Transistor 13.jpg|フレームなし|中央]]
<br>
===== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の特徴 =====
* 入力インピーダンスが高い
*: 入力インピーダンスが高い理由については、説明が長くなるため、後半のセクションに記載している。
*: <br>
* 出力インピーダンスが低い
*: 出力インピーダンスが低い理由については、説明が長くなるため、後半のセクションに記載している。
*: <br>
* 電流利得が高い
*: 電流利得A<sub>I</sub>はエミッタ接地回路と同じになる。直流電流増幅率をh<sub>FE</sub>とすると、電流利得A<sub>I</sub>は、<math>A_I = 1 + h_{FE}</math>となる。
*: <br>
* 電圧利得はほぼ1
*: 厳密には、電圧利得は1より少し小さくなる。
*: <br>
* 電力利得はエミッタ接地回路より小さい
*: エミッタ接地回路では、電圧増幅度が1より大きくなるため、電力利得はエミッタ接地より小さくなる。
*: <br>
* 入力電圧V<sub>IN</sub>と出力電圧V<sub>OUT</sub>は同相
*: コレクタ接地回路は入力電圧が上昇すると、エミッタ電流が増加して、抵抗R<sub>E</sub>の電圧降下が大きくなるため、入力電圧V<sub>IN</sub>と出力電圧V<sub>OUT</sub>は同相となる。
*: <br>
* 周波数特性はエミッタ接地特性より良い
*: エミッタフォロワの周波数特性は広帯域となる。
*: ベース端子からエミッタ端子を見ると、同位相で同じ振幅で電圧が変化するため、ベース端子からエミッタ端子の寄生容量が存在していても、見かけ上の容量が0であるようにみえる。
*: また、ベース端子とコレクタ端子間の容量C<sub>BC</sub>は、コレクタが交流的に接地されているため、エミッタ接地回路のような容量が何倍にもなって見えるミラー効果が起きない。
*: しがたって、周波数特性はエミッタ接地回路より良くなる。
<br>
===== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の使用用途 =====
入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが小さいため、出力インピーダンスの大きい信号源が低インピーダンスの負荷を駆動できるようになる。<br>
したがって、下図のように、低インピーダンスのスピーカーを駆動するオーディオアンプ等の増幅回路の出力段において、コレクタ接地回路はよく使用される。<br>
[[ファイル:Circuit Transistor 14.jpg|フレームなし|中央]]
<br>
エミッタ接地回路は、出力インピーダンスが高いが電圧利得がある。<br>
そのため、エミッタ接地回路で電圧利得を稼ぎ、コレクタ接地回路で出力インピーダンスを低くする2段構成はよく使用される。<br>
<br>
===== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の入力インピーダンスが高くなる理由 =====
入力インピーダンスZ<sub>IN</sub>は、ベース電圧がΔV<sub>B</sub>変化した時におけるベース電流の変化ΔI<sub>B</sub>の比であり、次式で表される。<br>
<math>Z_{IN} = \frac{\Delta V_B}{\Delta I_B}</math><br>
<br>
ここで、コレクタ接地回路において、ベース電圧がΔV<sub>B</sub>大きくなった時を考える。<br>
<br>
ベース電圧がΔV<sub>B</sub>大きくなると、ベース電流が変化する。<br>
しかし、ベース電流が変化した瞬間、ベース電流の変化の数100倍(<math>(h_{FE} + 1)I_B</math>)の電流がエミッタに流れるため、エミッタ抵抗の電圧降下が大きくなる。<br>
すなわち、ベース電圧をΔV<sub>B</sub>大きくなる時、エミッタ抵抗の電圧降下がほぼΔV<sub>B</sub>大きくなり、ベース電流が増えないように作用する。<br>
<br>
そのため、ΔV<sub>B</sub>が大きく、ΔI<sub>B</sub>が小さいため、コレクタ接地回路では入力インピーダンスZ<sub>IN</sub>は高くなる。<br>
<br>
===== コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の出力インピーダンスが低くなる理由 =====
出力インピーダンスZ<sub>OUT</sub>は、エミッタ抵抗の電圧降下がΔV<sub>E</sub>変化した時におけるエミッタ電流の変化ΔI<sub>E</sub>の比であり、次式で表される。<br>
<math>Z_{OUT} = \frac{\Delta V_E}{\Delta I_E}</math><br>
<br>
ここで、コレクタ接地回路において、エミッタ抵抗の電圧降下がΔV<sub>E</sub>大きくなった時を考える。<br>
<br>
エミッタ抵抗の電圧降下がΔV<sub>E</sub>大きくなると、ベース-エミッタ間の電圧V<sub>BE</sub>が下がるため、ベース電流I<sub>B</sub>が小さくなる。<br>
その結果、エミッタ電流I<sub>E</sub>が小さくなり、エミッタ抵抗の電圧降下V<sub>E</sub>が小さくなるように作用する。<br>
すなわち、ΔI<sub>E</sub>に変化によって、ΔV<sub>E</sub>の変化は小さくなるように作用するのである。<br>
<br>
そのため、ΔI<sub>E</sub>が大きく、ΔV<sub>E</sub>が小さいため、コレクタ接地回路では出力インピーダンスZ<sub>OUT</sub>は低くなる。<br>
<br><br>
<br><br>


__FORCETOC__
__FORCETOC__
[[カテゴリ:電子回路]]
[[カテゴリ:電子回路]]

案内メニュー