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<u>※補足<u><br> | <u>※補足</u><br> | ||
<u>負荷線は、負荷直線や負荷抵抗線とも呼ばれる。</u><br> | <u>負荷線は、負荷直線や負荷抵抗線とも呼ばれる。</u><br> | ||
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===== 実用上のエミッタ接地回路 ===== | |||
今までの回路図は原理を示すために用いられる図であり、実際の回路で使用する際には下図右のように使用する。<br> | |||
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抵抗R<sub>1</sub>とR<sub>2</sub>は、電源電圧V<sub>CC</sub>を分圧してベースに入力するためのバイアス抵抗(ブリーダ抵抗とも呼ばれる)である。<br> | |||
これは、ベース端子とグランド間の電圧を安定に保つ働きをする。<br> | |||
入力電圧V<sub>IN</sub>と出力電圧V<sub>OUT</sub>に接続されているコンデンサは、直流成分をカットするためのカップリングコンデンサである。<br> | |||
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エミッタ端子とGND間にエミッタ抵抗R<sub>E</sub>を接続する回路もあり、これを電流帰還バイアス回路と呼ぶ。(こちらのページを参照)<br> | |||
[[ファイル:Circuit Transistor 7.png|フレームなし|中央]] | |||
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また、下図に、NPNトランジスタとPNPトランジスタで作成したエミッタ接地回路を示す。<br> | |||
[[ファイル:Circuit Transistor 8.png|フレームなし|中央]] | |||
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===== エミッタ接地回路の出力インピーダンスがコレクタ抵抗RCの値と同じになる理由 ===== | |||
トランジスタのI<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性を用いると、エミッタ接地回路の出力インピーダンスがコレクタ抵抗R<sub>C</sub>と同じになる理由がわかる。<br> | |||
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トランジスタのI<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性とは、あるベース電流I<sub>B</sub>の時におけるコレクタ電流I<sub>C</sub>とコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>の特性のことである。<br> | |||
この特性を見ると、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>がある値以上になると、コレクタ電流I<sub>C</sub>がほぼ一定になる。<br> | |||
つまり、コレクタ電流I<sub>C</sub>は、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>の影響を受けなくなる。<br> | |||
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コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>が変化しているにも関わらず、コレクタ電流I<sub>C</sub>が変化しないということは、コレクタ-エミッタ間の抵抗R<sub>CE</sub>が高抵抗であるということである。<br> | |||
ここで、エミッタ接地回路を出力側から見ると、出力インピーダンスZ<sub>OUT</sub>はコレクタ-エミッタ間の抵抗R<sub>CE</sub>とコレクタ抵抗R<sub>C</sub>の並列接続となる。(電源電圧V<sub>CC</sub>は交流的には接地とみなすため)<br> | |||
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コレクタ抵抗R<sub>C</sub>は一定の値であり、コレクタ-エミッタ間の抵抗R<sub>CE</sub>は高抵抗(理想的には無限大)なので無視すると、出力インピーダンスZ<sub>OUT</sub>はコレクタ抵抗R<sub>C</sub>と等しくなる。<br> | |||
<math>Z_{OUT} = \lim_{R_{CE} \to \infty}\frac{R_C R_{CE}}{R_C + R_{CE}} = \lim_{R_{CE} \to \infty}\frac{R_C}{\frac{R_C}{R_{CE}} + 1} = R_C</math><br> | |||
[[ファイル:Circuit Transistor 9.png|フレームなし|中央]] | |||
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===== エミッタ接地回路のミラー効果 ===== | |||
エミッタ接地回路では、電圧利得をA<sub>V</sub>とすると、ベース-コレクタ間の容量C<sub>BC</sub>が<math>(1 + A_V)</math>倍なる。<br> | |||
これは理解し難い内容なので、まず、ミラー効果を簡単に説明する。<br> | |||
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静電容量Cのコンデンサに電荷Qを充電する簡単な回路を下図に示す。<br> | |||
[[ファイル:Circuit Transistor 10.png|フレームなし|中央]] | |||
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* '''上図左の回路''' | |||
*: 片方の電極に電圧Vを印加して、もう片方の電極を接地している回路である。 | |||
*: この回路に蓄積される電荷Qは、<math>Q = CV</math>となる。 | |||
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* '''上図中央の回路''' | |||
*: 片方の電極にVの電圧を印加して、もう片方の電極に負電圧-Vを印加している回路である。 | |||
*: この回路に蓄積される電荷Qは、<math>Q = C(V - (-V)) = 2CV</math>となる。 | |||
*: 見方を変えると、電圧Vで2Cの容量を充電しているともいえる。 | |||
*: つまり、A点から見れば、コンデンサの容量が2倍になってみえるということになる。 | |||
*: また、これは静電容量2Cのコンデンサの直列接続において、片方の電極に電圧Vを印加して、もう片方の電極に負電圧-Vを印加しているともいえる。 | |||
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* '''上図右の回路''' | |||
*: 片方の電極に電圧Vを印加して、もう片方の電極に電圧AVVを印加している回路である。 | |||
*: この回路に蓄積される電荷Qは、<math>Q = C(V - (-A_V V)) = C(1 + A_V)V</math>となる。 | |||
*: この回路も見方を変えると、電圧Vで<math>C(1 + A_V)</math>の容量を充電しているともいえる。 | |||
*: つまり、A点から見れば、容量が<math>(1 + A_V)</math>倍になってみえるということになる。 | |||
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*: エミッタ接地回路では入力電圧(ベース-エミッタ間電圧V<sub>BE</sub>)に-A<sub>V</sub>を掛けた値が出力電圧(コレクタ-エミッタ間電圧<math>V_{CE} = -A_V V_{BE}</math>)となる。 | |||
*: そのため、ベースコレクタ間の容量C<sub>BC</sub>に蓄積される電荷Qは、<math>Q = C_{BC}(V_{BE} - V_{CE}) = C_{BC}(V_{BE} - (-A_V V_{BE})) = C_{BC}(1 + A_V)V_{BE}</math>となり、 | |||
*: ベース側から見れば、ベースコレクタ間の容量C<sub>BC</sub>が<math>(1 + A_V)</math>倍なって見える。 | |||
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*: このミラー効果による容量<math>C_{BC}(1 + A_V)</math>とベース抵抗R<sub>B</sub>がカットオフ周波数<math>f_C = \frac{1}{2 \pi R_B C_B(1 + A_V)}</math>のローパスフィルタ(LPF)を構成するため、 | |||
*: 高周波成分の増幅度が下がってしまう。 | |||
*: 上式より電圧利得AVが大きければ大きいほど、カットオフ周波数が低くなることが分かる。 | |||
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[[カテゴリ:電子回路]] | [[カテゴリ:電子回路]] | ||